2009 Fiscal Year Annual Research Report
初等教育における新しい機器を利用した英語教育研究-3年間の実践と追跡調査を中心に
Project/Area Number |
20520534
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大岩 昌子 Nagoya University of Foreign Studies, 外国語学部, 准教授 (50340360)
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Keywords | 初等教育 / 電子耳装置 / 英語音声教育 / 音響分析 / 聴覚音声学理論 / 公立小学校 / 音声習得 / 聴覚心理的分析 |
Research Abstract |
本研究は英語教育の最も早い段階、すなわち小学校に電子耳装置によって聴覚を英語に適応させる準備教育を導入した際の効果を考察、さらには文法的内容を学習する中学まで追跡調査することで、音声授業等で人材が確保されなくとも持続可能な音声教育法を探り、さらには小~大学での外国語音声教育の全体像を模索する端緒をつかむことを目的としている。電子耳装置による音声習得に関しては、既に成人、高校生を対象に実験を行っており、種々の効果が認められている。 平成21年度は名古屋市立千種小学校に在籍する5年生および6年生の児童を対象とした実験を行った。英語部を新設し、実験はこの部活動を利用したため、自発的な児童が対象である。1回につき約1時間の実験時間を設定した。第1回実験として、平成21年4月13日~7月9日まで全20回(参加者22名)、第2回実験として平成21年9月24日~12月10日までの全10回(参加者14名)を設定し、実験期間とした。第1回実験前に被験者を対象に行った弁別課題では、語頭の子音+r, l/fとhの弁別は比較的容易であること、語頭のr, lの弁別/th, s, zの弁別/bとvの弁別は比較的難しいという点が判明した。実験後に行った同様の弁別課題では、問題間で差はあるものの得点が上昇した。また、第2回実験後に行った児童や保護者へのアンケート調査での自由記述の中では、英語に興味を持った点として「日本語と英語の発音の違い」、「発音の仕方や読み方、言い方」、「発音が変わると伝わらないこと」、「文のつなげ方」、「英語の歌」、「英語の単語を覚えること」などが挙げられている。電子耳装置を通して、次第に児童が英語の音に対する意識の仕方を変化させていったように見受けられる。一方、保護者側の感想としては「この単語を英語でなんと言うか聞くようになった」、「英語に対してネガティブな態度だったのが楽しくなったようだ」、「特に歌を通して自然に英語に馴染むことが出来たようだ」、「始めは興味がなかったようだが、かなりの英単語を覚え教えてくれた」、「本人は興味がでたのに気づいていないが、以前より興味を持ったのは確か」、「フォニックスが苦手だったが、最近聞き取れるようになってきた」などの記述が見られた。本研究の目的である「音声に意識をさせる」点が特に達成されたことが明らかとなった。
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