2010 Fiscal Year Annual Research Report
司法英語教育のためのコーパスを用いたアメリカ、イギリス判例の共時的、通時的研究
Project/Area Number |
20520553
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鳥飼 慎一郎 立教大学, 異文化コミュニケーション, 教授 (90180207)
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Keywords | 司法英語 / コーパス言語学 / アメリカ連邦最高裁判所 / イギリス最高裁判所 / 英語教育 / ESP / 通時的言語学 / 共時的言語学 |
Research Abstract |
研究実績の概要 (1)アメリカの連邦最高裁判所とイギリスの貴族院の判例を、1792年から1812年まで50万語、1910年から1911年まで50万語、2007年と2008年から50万語ずつ収集し、合計6本の歴史的司法英語コーパスを構築した。 (2)これらの6本のコーパス全てにタグ付けを行った。 (3)そのデータをファクター分析にかけ、Biber(1988)の枠組みをつかって100以上の語彙・文法的項目についてその発生頻度を調査した。 (4)その結果を基に、Biber(1988)が提唱する5つのdimensionの歴史的変化を測定した。(5)研究成果 アメリカの司法英語は5つのdimensionすべてにおいて数値が下がっており、口語的な文体からより巧緻な書き言葉の文体へ変化していること、語りの文体から説明的で記述的な文体へ変化していること、言語内で意味照応関係が完結する文体から言語外の状況依存型文体へ変化していること、書き手の判断を伝えようとするより説得的な文体へ変化していること、受動態の減少に伴い主体者を明示した具体的な文体へと変化していることが判明した。 一方、イギリスの司法英語は異なる歴史的変遷を経ていることが明らかになった。いったん口語的な文体となりその後巧緻な書き言葉の文体に変化していること、語りの文体からより説明的な文体に変化していること、言語外の状況依存型文体から言語内で意味照応関係が完結する文体ヘアメリカの司法英語とは反対の文体に変化していること、書き手の判断を伝えようとする説得的な文体からそうでない文体に一度変わり、その後より説得的な文体へと変化していること、受動態が減少しより具体的な文体へと変化していることなどが判明した。このようなアメリカとイギリスの司法英語の文体の違いは、イギリスの法廷では歴史的に口頭主義が強いこと、1885年以前の判例はローリポーターによる私撰の判例が広く用いられていたことなどに由来するものと考えられる。
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Research Products
(2 results)