2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語動詞の第二言語習得に関する研究と教科書教材への応用
Project/Area Number |
20520556
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
勝藤 和子 Anan National College of Technology, 一般教科, 教授 (50363130)
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Keywords | 心理動詞 / 教科書分析 / コーパス / 第二言語習得 |
Research Abstract |
20年度の検定教科書の動詞群別頻度調査結果に基づき,21年度は,心理動詞群を中心に研究を行った。まず,文献調査では,英語では基本的に他動詞である心理動詞が,日本語では自動詞であるという統語的な違いや形態素的相違が要因となって日本人の心理動詞の習得に顕著な困難性がある点に着目した。次に,検定教科書における心理動詞の出現状況や語彙的標準性を検討するために,高等学校用の文科省検定教科書「英語I・II」10シリーズ20種類の電子テキストを標準コーパス(FLOBとFROWN)と比較して,心理動詞10種類の頻度と使用環境を分析した。検定教科書の一部が過剰に口語性を追求している傾向や,一部の心理動詞の形容詞的現在・過去分詞の突出した出現頻度が明らかになった。次に,名古屋大学(NICE)の日本人英語学習者と英語母語話者コーパスを利用して,上記の心理動詞の頻度や使用状況を調査した。初・中級者では,明らかに,日本語と英語おける心理動詞の統語的・形態素的差異が原因と見られる誤用がみられた。また,初級者では,一部の心理動詞の形容詞的現在・過去分詞の使用が突出し,ほかの心理動詞の使用の貧弱さが目立った。中・上級学習者は,使用する心理動詞の種類が増えて,母語話者の心理動詞の使用に近づいている可能性を示唆していた。さらに,上級の学習者における誤用はほとんどなく,初・中級の頃に困難をともなった経験者目的語タイプの心理動詞の習得が完成していることが明らかになった。21年度の研究結果の意義と重要性は,次のような教育的示唆ができる点にある。(1)教科書において出現頻度の低い心理動詞については,学習者の初期の段階での"気づき"を促すような単元の設定が望まれる。(2)初・中級学習者に対しては,心理動詞の誤用に対応するため,日英語の統語的差異を説明するなどの明示的な指導が望ましい。
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