2009 Fiscal Year Annual Research Report
徳川儒学思想における明清交替――政治と学問の〈正統性〉評価の変遷
Project/Area Number |
20520562
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
眞壁 仁 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (30311898)
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Keywords | 明清交替 / 徳川思想史 / 儒学 / 正統性 |
Research Abstract |
研究の第二年度として、享保年間および享保年間以前の、徳川幕府周辺の知識人たちによる同時代的な中国情勢の分析と評価を中心に調査・研究を行った。(1)林春斎・林鳳岡編纂の『華夷変態』・『崎港商談』等の外交文書集に収録された情報と、編集担当の儒者たちの明・清朝それぞれの政権認識の関連づけを試みた。また清初の諸史料から浮かびあがる実際の様子と、日本側の諸史料に載る受容された情報との比較検討に着手した。(2)これまで幕府周辺の知識人たちの対外認識に注視してきたが、視角外においてきた日本国内の藩政との接点を探る必要があり、近年の日本思想史分野の新しい研究潮流である牧民の思想・明君録、また書物研究の成果を整理し、それらとの対話を行った。その結果、幕藩制の支配正統性において意義を有するとされる仁政思想が、国内にとどまらず、東アジア儒学史において、とりわけ明清交替期に如何なる意味をもつのかという新たな問いを抱えるに至った。(3)同時代の東アジア思潮と現在の国際的な研究環境のもとで徳川思想史を捉え直す試みとして、今年度も、ハーヴァード燕京研究所や全米アジア学会(地域学会を含む)への参加や報告、さらに政治思想として新たな分析枠組みの示唆を得るために、アメリカ中西部政治学会、国際政治思想学会に出席した。UCバークレー東アジア図書館やジョンズ・ホプキンス大学図書館ほか、アメリカ議会図書館・公文書館で史料調査も行い、日本国内では容易にアクセスできない豊富な英語の研究文献を含む諸資料を複写し持ち帰った。
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