2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520592
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
白根 靖大 Chuo University, 文学部, 教授 (80250653)
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Keywords | 中世史 / 中世系図論 / 系譜史料 / 系図 |
Research Abstract |
本年度は、秋田県公文書館に所蔵されている系譜史料の調査・収集・分析の続きと、山形大学附属図書館に所蔵されている系譜史料の調査・収集・分析を行った。 前者においては、A「佐竹系図略 中院家到来系図正誤」とB「佐竹御系図引用諸系譜書籍」を対象とした。Aは「佐竹系図」に関して中院家(朝廷貴族)からの教示を受けたことを示す史料で、前年度に調査した「北酒出本源氏系図」に中院通秀の花押があることとあわせて注目に値する。Bは近世に「佐竹系図」を編纂する際に引用・参照した諸系譜・書籍を記したもので、系図編纂の実態を解明するのに有益である。 後者においては、(1) 「桓武平氏諸流系図」(2) 「中条氏系図」(3) 「三浦和田氏系図」(4) 「和田氏系図」(5) 「中条・羽黒氏系図」を対象とした。(1)は鎌倉末~南北朝期に書写された系図に書き継いだもので、原系図の成立は建長年間までさかのぼる。(2)(3)は室町時代に作成された系図で、(2)に記された書き継ぎには(1)との共通点が看取でき、両者の関係性が注目に値する。(4)は断簡だが室町時代に書写された可能性のある史料で、(5)は他と形態が異なる特色を持った系図である。 (1)~(5)の系図群は中条氏に伝来したが、中条氏は和田氏の流れを汲み、和田氏は三浦氏と同族で平氏の一流である。よって、血族の範囲が異なる諸系図を中条氏が所有し相伝してきたことがわかる。こうした諸系図の作成・所有・相伝をめぐる歴史的背景と歴史的意義の追究が、中世系図論の体系化に向けた議論を提起することにつながる。
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