2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520599
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
三舟 隆之 Tokyo Health Care University, 医療保健学部, 講師 (20418586)
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Keywords | 日本霊異記 / 古代説話 / 地方寺院跡 / 同笵瓦 |
Research Abstract |
本年度の調査の目的は、『日本霊異記』の地域説話形成が在地で行われたことを実証するために、複数の説話が残る地域を選び、その地域の考古学的・歴史地理学的環境を復元することにある。そのため、国分寺・地方寺院を中心とするネットワーク、遺物の移動や交通路の復元から説話の伝承経路を、備後(広島県)、阿波(徳島県)・讃岐(香川県)・伊予(愛媛県)で実地調査を行った。 1,備後国では、上巻七縁は瀬戸内海を利用する海上交通の説話でありながら、中国山地の中にある三谷郡に伝わっている。その背景には三谷寺の造営に関与した僧弘済の布教範囲があり、調査の結果、同范瓦分布から備中とのルートが存在したことが判明した。これは説話の内容とも合致する重要な発見であった。また下巻第二七縁では備後南部の旧国造領域が舞台となっており、そこの地名由来説話などを素材に成立した可能性が考えられる。そのことは分布する瓦の共通性からも、地方寺院間でネットワークが存在したことが判明した。そして備後南部と北部の瓦が共伴する寺院の存在から両地域を結ぶルートが解明できた。 2,瀬戸内海ルートでは、阿波・讃岐・伊予の地域の寺院遺跡と説話の内容を検討した。特に讃岐国関係の三説話は、三木・山田・鵜足郡などを舞台とする異なる説話であるが、地獄をテーマとする点が共通する。この地域の瓦を比較してみると同箔瓦が存在し、国分寺と各地方寺院を結ぶルートが推測できた。また伊予では上巻第一七縁の舞台となった寺院の瓦を実見することができ、説話の伝承ルートを推定してみたい。 今回の調査では、説話の形成と伝承が現地の考吉学的遺物の流通とある程度範囲が重複するという見通しを立てることができた点で、意義のある調査であった。今後もこの視点から調査を継続していきたい。
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Research Products
(1 results)