2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520599
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
三舟 隆之 Tokyo Health Care University, 医療保健学部, 准教授 (20418586)
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Keywords | 日本霊異記 / 古代説話 / 地方寺院跡 / 古代交通路 |
Research Abstract |
本年度の調査の目的は、『日本霊異記』の地域関係説話の形成が在地で行われたことを実証するために、地域の文献史料や考古学的成果から地域の古代環境を復元するとともに、地域間交通路の復元を行うことにあった。『霊異記』の説話の地域を抽出し、上記の方法論で調査を行った。今年度の調査地は、九州・北陸・東海(駿河・遠江)である。 1,『霊異記』の加賀関係の説話では、「大野郷畝田村」や「御馬河里」などの地名がそれぞれ残り、説話の舞台がだいたい想定できた。その範囲には「津」が存在し、水上交通や陸上交通が発達し人々移動が活発な交通の要地であるとともに、浄水寺遺跡などの山岳寺院が存在したことも明らかになっており、古代交通と布教僧の移動が重複する地域であったことが明らかになった。 2,九州地方では、古代寺院が集中する豊前地は域と肥後地域を調査したが、この二つの地域は『霊異記』の九州関係説話に登場し、国分寺を中心とする地方寺院や山岳寺院のネットワークの存在が明らかになった。特に太宰府系の古瓦の分布する地域では、地方寺院間のネットワークが存在している。このようなネットワークを利用して布教僧が移動し、説話が移動したものと思われる。 3,東海地方では遠江の「磐田寺」と駿河の「鵜田堂」の説話が寺院縁起をもとにしている可能性が高く、それぞれの地域で推定される寺院跡が判明した。その結果、古瓦だけでなく伽藍配置など、共通点も多いことが判明した。 予算の関係で、当初予定した美濃・尾張地域を次年度に回した。今年度の調査では説話の伝承経路をいくつか明らかにすることができたが、同時に背景に有力在地豪族の存在があり、その豪族層と寺院・交通路との関係を明らかにする必要が生じた。昨年度は、国分寺と地方寺院、そしてそれに関わる僧侶の移動の実態を明らかにしたが、次年度は在地豪族と交通路の関係も視野に入れて行きたい。
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Research Products
(2 results)