2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520602
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
森 明彦 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (90231638)
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Keywords | 穢 / 罪 / 三一権実論争 / 法相宗 / 天台宗 / 神祇令散斎条 / 一闡提 / 仲算 |
Research Abstract |
平成22年度の研究は、神祇令散斎条の条文中の語句の注釈に力を注いだ。いくつかの注釈の中で特に新見解として重要と考えるのが、市と罪を犯した者への決罰との関係に関する注釈である。散斎条では、散斎の期間中は決罰を執行することは神の悪しみを招くとして堅く禁じられていた。棄市が市における決罰のことを指すように、決罰と市は深い関わりを持つ。なぜ市において決罰が行われるかの点について、栄原永遠男氏はそれが市の価格決定と深く関わることを指摘した。市と估価と決罰との関連に関する栄原氏の着目は、検討すべき重要な点であると考える。しかし、官私間の交易が估価によって行われる統制的性格を帯びるとする点に関しては問題があり、市での決罰の意味に関しても修正が必要考える。概略を以下に述べていきたい。 関市令官与私交関条は、通説では官私間の交易を中估価によって行うべきことを規定したものと考えられている。しかし、これは全くの誤りである。関市令除官市買条では、官私間の交易もそれぞれ交互に値をつけることを規定する。これは、官私間の交易においても双方和同した時価によって行うべきことを意味する。したがって官与私交関条は、交易全体に掛かる規定ではなく、官の支払い手段が貨幣ではなく物品である特殊な場合の規定であると考えなければならない。そのように考えることによって初めて、市が活発な交易が保証されることとなり、多くの人々が集まる場となりうる。市において決罰が行われるのは、市司が估価を決定するからではなく、統治の対象となる様々な人々が集まる場で、懲戒を明らかにするためである。估価はその際の、罪の軽重を決める規準となったのである。この成果は、当初学術雑誌へ投稿する予定であったが、平成23年度に出版予定の著書に収録するためには、発表後一年以上の経過が必要なため投稿は見合わせている。
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