2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520603
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Research Institution | St. Thomas University |
Principal Investigator |
森 宣雄 聖トマス大学, 人間文化共生学部, 准教授 (20441157)
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Keywords | 近現代史 / 日本史 / 沖縄学 / オーラルヒストリー / 社会思想史 / 社会運動史 / グローバル・ヒストリー / 歴史哲学 |
Research Abstract |
当該年度においては、本研究課題と大いに重なる沖縄県の米軍基地移設問題が日本の内政・外交両面にわたる一大争点となり、それが鳩山由紀夫首相の辞任、政権交代の原因ともなるという展開を遂げた。研究課題に関わるこうした社会状況の変化を受けて、研究代表者は研究成果を国際的討議空間に投じていくよりも、まず日本国内のメディアや社会的関心の求めに応じて発表していく方向へと、当初の計画を一部修正して研究活動を進め、大きな成果を上げることができた。 具体的には図書2件、雑誌論文2件、学会発表・講演2件、新聞掲載論説4件によって、第2次世界大戦後の沖縄・奄美の現代史を日本現代史および広く近代世界史において位置づけ、その独自な特質を明らかにする研究成果を発表した。 その沖縄・奄美の現代史の独自性とは、国家の帰属が不明瞭にされ、長期にわたり主権国家の保護の範囲外に置かれる厳しい経験の中から、国家や主権性に頼らずに世界に連帯を求める社会運動の思想と政治的主体性を構築してきた点に集約され、何らかの国家や民族主義や党派性を媒体とせずに、生活者の視点から直接的に世界につながり、公正な世界のあり方を訴えていく、その思想・運動経験は、主権国家の排他的な域内支配の集積によって構成される近代世界の国家間システムとは異なる世界像を提起している。そしてこの国家・民族・政党などを媒介せずに、地域の暮らしと世界が直接につながるコミュニケーションの姿は、グローバル化の中の新たな人間社会のあり方として近年検討されている「グローカル化」のモデルに通じる、その先駆的具体例とも捉えることができる。 このように国家権力とその奪取を中心的争点とした20世紀の政治・社会運動・社会思想とは異なる、新たな社会思想が沖縄・奄美の現代史に発見できることから、特に学会発表・講演では、この知見を新しい世界史の研究方法であるグローバル・ヒストリー研究に接続して位置づける検討を提起した。
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Research Products
(6 results)