2009 Fiscal Year Annual Research Report
勧農を中心とする三県一局期のアイヌ政策に関する研究
Project/Area Number |
20520605
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
山田 伸一 History Museum of Hokkaido, 学芸部, 研究員 (30291909)
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Keywords | 日本史 / 先住民族 / 勧業政策 / 北海道開拓 / 県庁文書 / シカ / 札幌農学校 / 農本主義 |
Research Abstract |
北海道立文書館所蔵の札幌県文書のうち、十勝・日高・胆振地方を中心にアイヌ民族に対する勧農政策に関する史料を継続的に調査した。その成果を取りまとめるには至らなかったが、(1)勧農政策の前提となったアイヌ民族の飢餓の主要因は、シカ減少など開拓使期からの政策および和人「奸商」との関わりにあること、(2)狩猟・漁猟よりも農耕が優れていると見、農業への移行を必然とする考えは開拓使期から行政内部に根強く存在し、そうした考えが政策に影響した面が強いこと、(3)政策を特徴づける勧農と集住には、行政主導という面が非常に強い一方、それに適応するか拒否するかといったアイヌ民族の対応には、地域・世代・男女などの違いが見られること、といった見通しを得た。 前年度に札幌県期のサケ漁禁止から勧農政策の立案までの過程を検討した十勝地方については、当該期における共有財産の巡査による拐帯事件について国立公文書館等で、勧農政策の実施に深く関与した十勝晩成社の背景を知るために静岡県立図書館等で、史料調査を行った。 公文書を補完する素材を得る目的で、函館で刊行された『北海』、『蝦夷日報』(のち改題して『北海朝日新聞』)、『北海朝日新聞』(のち『函館公論』、さらに『函館新聞』と改称)等の調査を行い、三県期のアイヌ政策の延長上で生じた十勝アイヌの共有財産問題やそれに関連する官製会社の経営状況に関する記事、アイヌ民族に対する教育に関する記事、三県期にアイヌ民族の農耕地とされた土地のその後の変遷に関する記事等を収集した。これらの収集資料の一部を用いて、奥尻島へのシカ移入を事例に当該期の勧業政策の特徴を考察する論考を作成した。 その他、網走市と美幌町において根室県・北海道庁によるアイヌ民族の集住・農業指導政策に関する文献調査と現地調査を、国立国会図書館と大原社会問題研究所において、より後の時期の関係史料調査を実施した。
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