2010 Fiscal Year Annual Research Report
イスラム社会における「結婚力」の研究:フランス委任統治期シリアのケース・スタディ
Project/Area Number |
20520609
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大河原 知樹 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (60374980)
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Keywords | 中東 / 都市 / 家族 / 世帯 / 歴史人口学 / 結婚 / 女性 / 人口 |
Research Abstract |
22年度終了時点で、本研究の実際の分析はほぼ終了していた。それを要約すれば、オスマン時代末期(1914-1917)に異常な上昇を見せたダマスカスの男女の平均結婚年齢は、フランス委任統治期前半に1914年以前の水準まで低下したが、安定したという状況ではないこと、1920年を境として、平均結婚年齢が男性は27才、女性は19才を下回ることがなくなったこと、この二点が最終的な研究成果である。 以上の成果に加えて、繰越申請をした23年度において、11月にカイロで実施された国際ワークショップで、本研究成果の一部を公開すべく、データ中の新郎新婦、および父親の職業に着目したマッチングを行い、オスマン時代に就労した親世代の職業動向がフランス委任統治期の子世代にどう反映していたかを分析し、結果を発表した。時間の制約があり、十分な分析はできなかったが、同ワークショップで提示した暫定的な分析結果は次の通りである。1934年に記録されたイスラム教徒の婚姻数1243件のうち、1019件(約82%)という高い割合がlower classに分類される。残る224件中のupper class47件(約4%)を除いた175件(約14%)程度がmiddle classと推定される。その多くは、公務員、商人、医者、教師、技師などからなっていた。彼らは当時のシリアの都市社会政治を動かす新たな原動力として注目されているが、婚姻人口比では多数を占めていない。結婚相手の選択にあたっては、相当程度、親世代の職業が子世代に影響を与えていた可能性があったことを指摘した。
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Research Products
(5 results)