2008 Fiscal Year Annual Research Report
キャフタ条約に関する総合的研究-中央ユーラシア史における位置付けをめぐって
Project/Area Number |
20520610
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
澁谷 浩一 Ibaraki University, 人文学部, 教授 (60261731)
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Keywords | 東洋史 / 中央ユーラシア / キャフタ条約 / 清 / ロシア |
Research Abstract |
本研究は, 18世紀前半に清とロシアの間で締結されたキャフタ条約をモンゴル帝国崩壊以後の中央ユーラシア史の中に明確に位置付けることを目的としている。研究の初年度となる今年度は, なお未解明な部分を残すキャフタ条約締結交渉の詳細な経過を解明することに重点を置いた。複雑な交渉経過を辿ったキャフタ条約は, 北京で行なわれた主要な交渉, その後の国境付近に於ける国境画定交渉, 最終的な条約文の作成・交換という3段階に分けて考えることができる。かつて研究者代表者は, 11条ある条文の中の第4条・第6条といった特定の条文に焦点をあててこの条約の成立過程を検討したことがあるが, 今年度は, 近年出版されたロシア側の史料集を再度全面的に検討し直し, その他の条文も含めたこの条約全体の形成過程を検討した。その結果, 交渉はロシア側の主導によって進められ, 条約の骨格を定めた北京交渉が, ロシア側作成の最終草案を清側が認めることによって終了したという従来の捉え方は不十分であることが明らかとなった。すなわち, 北京交渉においては, ロシア側が最終草案を提示する前の段階で清側が作成した草案が重要であり, キャフタ条約条文はほぼこの清側草案に基づいて作成されたとみなすことが出来るのである。従来の研究は, ロシア側最終草案こそが最重要であるというロシア側史料の記述を鵜呑みにしていた結果であると言える。以上の結論はキャフタ条約の位置付けを考える上で極めて重要であり, まもなく発表する予定の論文に盛り込まれる予定である。今年度十分に検討できなかった, 国境画定交渉以後の過程については次年度以降の継続課題となる。
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