2011 Fiscal Year Annual Research Report
キャフタ条約に関する総合的研究-中央ユーラシア史における位置付けをめぐって
Project/Area Number |
20520610
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
澁谷 浩一 茨城大学, 人文学部, 教授 (60261731)
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Keywords | 清 / ジューン=ガル / キャフタ条約 / 中央ユーラシア / ロシア |
Research Abstract |
本年は,1740年の清とジューン=ガルの講和交渉に関する研究に重点的に取り組み成果を上げた。この時の交渉は,両者が初めて明確な形で平和友好関係を確立した歴史的画期であるが,従来その経緯・内容および歴史的意義についての理解は不十分であった。本研究では,新出満洲語史料を利用して詳細に講和交渉の経過を解明したが,特に中央ユーラシアの国際関係という視点から,清とロシアのキャフタ条約(1728)の影響に注目した。 交渉開始時から,清・ジューン=ガル双方はロシアとの関係を強く意識していた。清の雍正帝は1728年のロシアとのキャフタ条約締結交渉の方式による国境画定を求め,交渉においても,対ロシア交渉の経験を踏まえた主張を行った。一方のジューン=ガル側は,当初はロシアとの関係強化を模索しながら,清に対してはロシアとは国境画定をしなくても平和友好であることを強調し,その後も一貫して国境画定を望まない姿勢を貫いた。 清側は,アルタイ山脈を国境と定める清側の国境画定案を拒否するジューン=ガル側に譲歩し,明確な国境画定がないままでの講和に合意する。最終的な講和は,現状の牧地の維持を概ね認め合うというものであったが,その他に,アルタイ山脈北方のジューン=ガル側のウリャンハイについても現状維持を認めるという,従来知られていなかった重要な項目があった。これは,キャフタ条約によってロシアとの間で解決したウリャンハイの帰属問題を,ジューン=ガルとの間でも確認・解決しようとした清側の意向が反映されたものだった。 この時同時に取り決められた遣使・交易の規定は徹頭徹尾キャフタ条約及びロシアとの関係を意識して定められており,この時の講和は,全体として,キャフタ条約締結を前提とし,その影響の中で成立したものだった。本研究を通じて,キャフタ条約の中央ユーラシア国際関係におけるおける影響力の大きさが立証できたと考える。
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Research Products
(2 results)