2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世朝鮮におけるイエズス会宣教師作製世界図の伝来とその受容に関する研究
Project/Area Number |
20520614
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 信昭 University of Toyama, 人文学部, 教授 (50206512)
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Keywords | 朝鮮史 / 東アジアキリスト教史 / イエズス会 |
Research Abstract |
研究2年目にあたる平成21年度の研究は、朝鮮近世の中でも第16代国王の仁祖時代(1623-49)前半を中心に、その時期に伝来した漢訳西学書について検討を加えてきた。検討の主な点は、いつ頃に誰がどのような漢訳西学書を伝えたのかということと、伝えられた書籍が当該社会にどのような影響を与えたのかということであった。 また、検討した主な史料は、官撰史料の『李朝実録』、明朝に使行した知識人が書き残した使行日記の『朝天録』、渡日した通信使らが書き残した使行日記の『東槎録』、或いは知識人らが編述した文集などである。いずれも、富山大学図書館で所蔵しているものである。検討の結果、次のようなことが明らかとなった。 これまでの研究では、仁祖代前半に朝鮮に伝えられた漢訳西学書は、仁祖九年(1631)に陳奏使鄭斗源が山東半島登州で出会ったイエズス会士ロドリゲスから望遠鏡などの西洋文物とともに漢訳西学書を贈与されたことだけが注目されてきた。しかし、同時代に活躍した朝鮮士大夫の現存する文集を網羅的に閲覧した結果、これまで全く注目されていなかった崔有海という人物が、仁祖七年(1629)に問安官として登州に赴いた際に、当地でキリスト教信徒の張〓と出会い、彼から利瑪寶(マテオ・リッチ)や艾儒略(ジュリオ・アレーニ)などのイエズス会宣教師等の動向や宣教師等が持っている学問について教授された事実があることが判明した。 こうした事実については、現在、「朝鮮仁祖代前半に伝えられた西洋情報:崔有海と明末の天主教徒張〓との出会い」と題して論文にまとめている状態である。平成22年度中に公表する予定である。
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