2008 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア型発展経路研究序説-19世紀ジャワ島西部を事例として-
Project/Area Number |
20520615
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大橋 厚子 Nagoya University, 大学院・国際開発研究科, 教授 (80311710)
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Keywords | 東洋史 / 東南アジア史 / 社会経済史 / 植民地の社会変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、貨幣経済が浸透しかつ一部で資本制企業が活動していながら、市場メカニズムが充分に機能する社会へと一方向的な変化をおこさなかった社会のあり方およびその原因を、19世紀のジャワ島西部を事例として考察することにある。今年度は、基本史料の効果的な分析が可能となる具体的研究枠組みの構築が主な目的であった。 (1) グローバルヒストリーの中への本研究の位置を試み、本研究の独創性を、「組み込み論」批判の研究の一部であるが、人口稀少で分業が進んでおらずかつ国家が存在しない地域を対象とする初の事例であること、植民地政庁の能動性に焦点をあてること、そして現在の「普通の人々」の問題解決に役立つ(現在の社会経済問題に対して提言が可能な)研究を目指すことに置いた。 (2) 18世紀末から19世紀半ばまでのジャワ島をとりまく政治経済的情勢を概観し、強制栽培制度がジャワ島の農民に受け入れられた理由のひとつとして、当該期の国際的銀不足による銅貨に対する銀の高騰が挙げられること、さらに強制栽培制度の考察には当時の中国人の動向把握が不可欠であることを指摘した。これらは従来の強制栽培のイメージを塗り変える第一歩となる。 以上の内容は、2009年2月の東南アジア史学会中国・四国例会で発表した。さらに「強制栽培制度」が高校の世界史教科書にのる用語であることに鑑み、以上の内容および本研究に至る筋道を、一部高校生も視野に入れつつ、大学生を中心とした一般の人が興味を持てるスタイルでインターネットで公開した。 なお、史料収集活動については、オランダ国立文書館よりインターネット注文にて史料を入手したほか、インドネシア国立文書館より30年代から50年代に至るプリアンガン地方史の基礎資料Algemeen Verslagを入手した。
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