2011 Fiscal Year Annual Research Report
アッバース朝書記史料による書記官僚社会と文書行政の総合的研究
Project/Area Number |
20520617
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 和裕 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (70274404)
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Keywords | 東洋史 |
Research Abstract |
本研究は、10世紀アッバース朝・ブワイフ朝の書記官僚アブー・イスハーク・イブラーヒームが執筆した文書集を中心に、後期アッバース朝の文書行政と官僚社会のあり方を検討し、当時の書記官僚の形成した相互規定的文化や行政技術、規範意識などを明らかにすることを目的とした。本年度は研究の最終年度として以下の作業を行った。 1.これまでに引き続き、アブー・イスハーク・イブラーヒーム文書集の各種写本群を比較検討し、その内容の分析を進めるとともに、イブン・アルアミードおよびサーヒブ・イブン・アッバードの文書集の内容の検討をすすめた。本年度は、昨年度中心的にすすめた書記文書や書記史料に現れる「奴隷」の様態とその叙述のありかたの分析をもとに、アッバース朝における奴隷と宮廷や行政官僚にかかわる研究の総合と総括を行った。また、本年度は最終年度として、行政における「紙」の導入に着目し、行政官僚とアッバース朝の出版文化、および書籍業と気球邸の関わりについての研究を進め、その成果を発表した。 2.本年度も昨年度に引き続き、アッバース朝後期の代表的な書記典範であるクダーマ・ブン・ジャーファル『書記の流儀』、およびアッバース朝行政に大きな影響を受けたマムルーク朝の書記典範であるウマリー『高貴なる用語』の読解分析を進め、特殊な行政用語の解析をすすめることによって、アブー・イスハーク・イブラーヒーム文書群の理解の深化に努めた。特に、アッバース朝期とマムルーク朝期のアフド文書における「命令文」の比較をすすめ、その特徴の把握と整理に努めた。この結果、命令文に関わる、行政制度の重要な性格が明らかとなった。 3.初期イスラーム史における書記の様態を検討する必要から、昨年度立ち上げを行った「初期イスラーム史研究会」を定期的に開催し、若手研究者との意見交換や研究の推進を行い、本課題に関わる重要な研究の場として、その定着に努めた。 4.アッバース朝行政関連図書の購入と整理をすすめ、九州大学所蔵書として設置した。
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