2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520622
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
杉山 清彦 Komazawa University, 文学部, 講師 (80379213)
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Keywords | 大清帝国(清朝) / 中央ユーラシア / 八旗制 / 満洲(マンジュ) / 女真(ジュシェン) / ヌルハチ / 王公 / 近世 |
Research Abstract |
本研究は、マンジュ(満洲)人皇帝が君臨し大清を国号として名乗る王朝を、最後の中華王朝「清朝」としてではなく、ユーラシア東方の広域・複合国家「大清帝国」として捉え、その支配体制の根幹をなす八旗制に焦点を当てて、八旗制、ひいては帝国全体の国制を解明しようとするものである。 研究初年度である本平成20年度は、そのためにまず史料蒐集・分析に重点を置く予定であったが、主たる史料所蔵機関である中国・北京の中国第一歴史档案館の史料公開状況が著しく悪化したこと、また支配構造について論じる機会に恵まれたことなどのために、新規史料調査よりも現時点での八旗制・帝国国制に関する私見の総合・提示を中心に進めることとした。即ち、八旗は中央ユーラシアの遊牧国家の軍制・国制と本質的共通性を具有した組織であり、かつその特質は制度面・人事面の双方において帝国全体の支配体制にも浸透し、その根幹をなしていたということができる。そしてその下で、漢人社会における科挙・儒教の尊重やモンゴル・チベットにおけるチベット仏教保護など、在地の体制・慣行を最大限維持するとともに融合・利用を図ったのである。このような帝国の支配のあり方は、八旗という強固な組織に支えられた“固い"原則と、それさえ受け容れれば状況に合せて柔軟に対応する“柔らかい"運用であったと表現することができよう。 このような八旗制度像・帝国像はこれまでの「清朝」像を大きく塗り替えるものであり、次年度以降、その精緻化を重ねるとともに、史料蒐集・事例研究を進めることで、巨視的・微視的双方からの研究深化を図る。
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