2010 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス商務院の組織的・政策的特質と失業保険制度の起源
Project/Area Number |
20520633
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松永 友有 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (50334082)
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Keywords | 西洋史 / 経済史 |
Research Abstract |
学会誌『社会経済史学』に単著論文「イギリス商務院と最低賃金制度の形成」の掲載が決定した。 本稿は、輸出貿易の拡大を史上任務とするという商務院の組織的特質に着目した上で、失業保険制,度の導入にはきわめて熱心であった商務官僚が最低賃金制度には終始消極的であったことを実証した。それにもかかわらず、世論による圧力を受けて自由党政権が最低賃金制度導入を決定した際には、本命視されていた内務省でなく、商務院が同制度の担当官庁となった。商務官僚がイギリスの産業競争力の維持を何よりも重視して産業委員会法を運用した帰結として、同法の効果は最小化されることとなったのである。 このように、本稿においては、商務院の通商政策と社会政策を関連づけて論じるという、従来にない本研究独自の視点を活用することによって、失業保険制度と最低賃金制度に対する商務官僚の対照的な姿勢の背後にイギリス産業の対外的競争力の維持を図る、という一貫した意図を見出すことに成功したのである。 また、横浜経済学会が刊行する『エコノミア』に単著論文「1909年職業紹介所法の制定とイギリス商務院の労働政策」を掲載した。本稿においては、最低賃金制度にはきわめて消極的であった商務官僚が、職業紹介所法の制定には積極的に尽力した点に着目し、その要因を第一論文と共通する視点から実証的に究明した。
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