2010 Fiscal Year Self-evaluation Report
Transference and Communication in the Alpine Ring during the Middle Ages in Europe
Project/Area Number |
20520637
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Research Field |
History of Europe and America
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
CHIBA Toshiyuki Tokyo University of Foreign Studies, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (20345242)
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Project Period (FY) |
2008 – 2011
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Keywords | 西洋史 / 中世史 / 移動 / 山岳 / 異文化交流 / 交通 / 地図学 / 峠 |
Research Abstract |
本研究は、ラテン=キリスト教世界の形成、ヨーロッパの成立にとって重要性をもったアルプス山脈及びその東西南北の山麓地域を《環アルプス圏》と定義し、同圏域を巡る人・物資・文化の移動とコミュニケーションのあり方の分析を目的とする。同圏域に含まれる地方を具体的に列挙すれば、スイス、ブルゴーニュ地方、シュヴァーベン地方、バイエルン地方、ロンバルディア地方、ティロル地方となるが、アルプス山脈を通過する《移動》自体も考察対象とするため、実際にはさらに広い地域が対象となる。アルプス山脈のみならず、アルプスを越えて結び合う山圏を《環アルプス圏》と定義し、これを研究対象空間とすると同時に、アルプス越えという行動自体にも着目し、中世における環アルプス圏の歴史とその全体的構造に迫る。 その際、以下の観点が分析の軸となる。 (1)移動経路 アルプスを通過する場合の経路(ルート)について、入口、峠、出口の位置を確定する基礎作業の他、経由する教会、修道院、王領の位置と、ルート選択の理由を明らかにする。 (2)人材の移動 宮廷間、各地から宮廷に集中する人材移動とともに、教会人の移動、とくに11世紀の教会改革の時代における改革派修道士の移動、12世紀における異端運動の伝播過程等、各次元での人材移動を解明する。 (3)物資の移動 商人文書が未発達の初期中世に関しては、国王証書、年代記、書簡、地誌等から物資の移動を数量的と同時に質的に把握することが必要となる。この時代の統治システムである移動宮廷が物資を現地で消費する体制であること、また市場経済が未成熟であり、広域の物流が本格化していない状況を踏まえ、物資の移動の「質」の解釈を行う。 (4)文化の移動 イタリア都市における書記技術・行政文書作成術がドイツの国王宮廷へ伝えられたケース、(2)に挙げた異端運動の伝播過程、教会改革の導入、修道院間の写本の移動、ローマ巡礼等、文化的・宗教的なインパクトを移動先に与える移動を扱う。 (5)移動の政治性 移動そのものが政治性を帯びているケースとして、ドイツ国王のローマ行(皇帝戴冠)、ローマ教皇のアルプス越え、イタリア王位を兼任する神聖ローマ皇帝のパーヴィア訪問等、アルプスを越えて移動することに高度な政治性が備わる場合を扱う。 本研究では、以上の5点を軸に研究をおこなうが、時間的制約から、その前後にも眼を配りつつも10~11世紀に焦点を絞り、移動経路と移動実態の正確な把握(1)を第一目標とする。その上で、(2)のうち、教会人の移動、(4)のローマ巡礼、(5)の皇帝・教皇の移動の解明を、第二の目標と位置づける。
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