2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520640
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
皆川 卓 University of Yamanashi, 教育人間科学部, 准教授 (90456492)
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Keywords | 比較国制 / 仲裁協定 / ヨーロッパ公法 / 政治的人文学 / 宗派的連帯 / 国際的封建制 / ローカル・コミュニケーション |
Research Abstract |
20年度は所期の計画に従って、近世ヨーロッパにおける国際的仲裁のデータベースを作成すべく、刊行資料及び未刊行資料の収集を行った。平成20年度7月までにテーマに関連する最近の研究を総覧し、続いて研究基盤の一つである18世紀の条約集成について必要箇所の整理を終えた。続いてウィーン王室宮廷国立文書館とミュンヘン州立中央文書館に、国際的仲裁に関する史料の有無を問い合わせた。しかし文書館の前時代的な史料カテゴライズのゆえに、事前調査に若干の問題が生じた。秋季は校務のため渡航は困難であり、21年2月に渡航。しかしミュンヘンではバイエルン公国とボヘミア王国の間の仲裁裁判史料の発見に成功した。またウィーンでは数ジャンルの史料群を横断的に調査した結果、神聖ローマ皇帝によるイタリア諸侯国とその周辺諸国の仲裁裁判に関する史料を見出した。加えて同文書館の外交文書群に含まれる17世紀の国法学書に、プロイセン・ポーランド間の国境紛争における仲裁活動の変化、及びオランダとリエージュ(司教国)の仲裁規定を発見した。これによって国制・宗派の異なる国家間の仲裁について最低限のデータがそろった。関連文書は約2200点で、コピーには高額の費用を要することから当面必要なものを書写・マイクロ化し、残りは今年度の科研費による発注を予定。なお複写が可能な分については帰国後データベース化作業に入り、その過程で1.主権国家とされた国にも中世の上級君主の裁判権が残存し、それが仲裁の正当性を付与する「国際的封建制」タイプと、2.主権の監督を受けながらも、現地社団(領主・都市・村・組合)の主導で実施し、これを追認する「ローカル・コミュニケーション」タイプの仲裁があることを発見。この間、国際的仲裁を各国国制から位置づける研究目的の主旨に関連し、材料の一つバイエルン公国について、当該仲裁と同時代の国制に関する研究会報告を行っている。
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