2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520640
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
皆川 卓 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (90456492)
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Keywords | 中央ヨーロッパ / 仲裁の多様性と共通性 / 国際的封建制 / 現地社団コミュニケーション型仲裁 / 通商紛争 / 法学的解決 / 境界紛争 / 政治的保証 |
Research Abstract |
当該年度前半はこれまでに作成したデータを相互に比較し、暫定的な結論を補強する作業を行った。その過程で新たに仲裁の方法を地域的にだけではなく、紛争事案ごとにグループ化すべきことが判明した。通商に関する紛争については、一般に仲裁委員会をセクター化して法実務的に処理するのに対し、境界紛争については在地領主や地方管区など現地の「社団」に委ねつつも、中世の仲裁のように周辺諸邦・諸国を仲裁裁判官などとして巻き込み、決定にはその政治的保障を求めていた点である。一方国全体の統治権を巡る紛争については、両方の試みが混在していた。法学理論は総じてセクター化された仲裁の中で展開され、境界紛争の仲裁については非法学的商議が一般的であったことも判明した。これは未整理のネーデルラントを除くこれまでの対象地域のデータ比較から発見し、比較材料とした16~17世紀の中央ヨーロッパの仲裁について一般に看取できる傾向である。ここには仲裁当事国の国制や法思想との個別的関係は見出せない。結果として等族制的構造の強い当該期の中央ヨーロッパ諸国間で展開された「国際的封建制」「現地社団コミュニケーション型仲裁」の相違にもかかわらず、領土の観念は強固であり、法学的解決には馴染まない政治交渉の対象と見なされていたことが明らかとなった。統治権紛争に二通りの仲裁が混在していたのは統治権理解の相違による。これまで中央ヨーロッパを対象とした個別的検討により、諸国間関係の多様性を明らかにしたが、領土に関しては当該地域にも紛争事案毎の共通性が見出されたことで、当該テーマの地域的な分布図を想定していた当初の予定は修正が必要となった。当該年度に予定していたネーデルラントの仲裁におけるデータベース作成への着手は、年度後半にずれ込み、作成は達成したが期間中に成果を学会誌等に発表するには至っていない。今後以上の成果を順次発表する予定である。
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