2010 Fiscal Year Annual Research Report
海の論理からみたイングランド中世史(10世紀から13世紀)の再検討
Project/Area Number |
20520647
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
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Keywords | 漁業 / 海民 / 社会史 / 中世 / イングランド / AElfric / Colloquy |
Research Abstract |
1.巡見 8月と2011年3月にイングランド西部(ドーセット、デヴォンシャー、コーンウォール)の海岸部巡見を行った。この地域は東部と異なり、魚種も豊富であり、ピルチャード漁をはじめとする沿岸の漁業も盛んでメヴァギシーのような漁村も観光とともに活発な漁労活動を展開していることを確認した。 2.史料・文献調査 こうした現状を前提にして、大英図書館で『エルフリックの対話』Aelflic's Colloquy(BL.S.Cotton Tiberius A.iii)の転写を行った。現在観光されているガームスウェイの刊本(AElfic, Colloquy : Garmonsway 1939)は古英語のテキストとして編集され、ラテン語で書かれた原本を忠実に再現していない。今回の転写によってオリジナルを忠実に再現した。そこから1000年当時の魚種を抜きだし、昨年度作成したデータ・ベースをさらに充実させた。次に、考古学関係の文献から(とくにエルフリックが修道院長をつとめたエインシャム修道院の発掘調査報告書Aelfric's Abbey : Excavations at Eynsham Abbey, Oxfordshire 1989-92や彼が若いときに過ごした南西部イングランドの発掘調査報告書等)、発掘された魚種を地域ごとに整理した。古いテキストのラテン語の魚種名は現在の英語の魚種名とかならずしも一致していない可能性がある。この点考古学者は骨から魚種を確定するためより正確な情報をえられる。これらの作業によってデータ・ベースの精度を上げた。 3.成果公表 2011年度中に論文として成果を発表する予定である(現時点では『西洋史研究』にノミネートしている)。
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