2008 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦初期における米国核政策と被爆者・ヒバクシャ情報
Project/Area Number |
20520648
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
高橋 博子 Hiroshima City University, 付置研究所, 講師 (00364117)
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Keywords | 西洋史 / 日本史 / 政治学 / 残留放射線 / 病理学 / 核実験 / 被爆者 / ABCC |
Research Abstract |
米国は日本占領直後から原爆の影響のうち残留放射線(原爆炸裂一分後から発生する放射線)の影響を過小評価・否定する公式声明を出し続けており、残留放射線の問題は重要な問題として物理学でも医学でも扱われてこなかった。その一方で、原爆による被爆者や核実験によるヒバクシャの残留放射線による被害が、より深刻であることは、原爆症認定集団訴訟の原告や核実験によるヒバクシャ側からの具体的な身体的影響をともなう証言によって明らかになりつつある。しかしながら、物理学的・医学的研究そのものが軽視されていただけに、いわゆる従来の「科学」の名における研究の蓄積そのものが浅く、いわば科学が被爆者・ヒバクシャの具体的証言や身体的影響の説明に追いついていないのが実情である。2008年7月に、科研費基盤研究C「冷戦初期おける米国核政策と被爆者・ヒバクシャ情報」研究会を2回にわたって広島平和研究所にて開催し、物理学、医学の専門家を招いて、残留放射線の問題を物理学・医学・社会科学の観点から多角的に検討した。物理学では初期放射線についてはかなり精度の高い値はだせるものの、残留放射線についてはまだまだ説明できない未解明の部分が大きいことが浮き彫りになった。それに対して、実際に広島・長崎の被爆者の治療に携わる医学者の視点からは、現在物理的に充分説明できないとはいえ、あまりにも残留放射線による被爆の状況と実際に身体にあらわれる症状とが整合性があるため、むしろ科学はその開きを説明する努力をしなければならないとの指摘があった。本研究会では物理学・医学・社会科学の分野を超えて、被爆者・ヒバクシャが生み出された物理学的・医学的・歴史的背景を明らかにするための重要な研究会となり、被爆者・ヒバクシャの実態をこれからも解明してゆく必要性を分野を超えて認識することができた。
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