2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ近世都市の宗教変容に関するトポグラフィックな検討
Project/Area Number |
20520650
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
高澤 紀恵 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80187947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 朝子 国際基督教大学, アジア文化研究所, 研究員 (40433750)
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Keywords | 都市 / 近世 / トポグラフィー / 史料論 / 空間 / 社会的結合 / 比較史 |
Research Abstract |
宗教改革とカトリック改革に揺れるヨーロッパ近世都市の宗教・社会変容を都市内部のトポグラフィックな分析から迫ることを目的とした本研究は、3年の研究期間に一定の成果を挙げることができた。高澤は、パリ全体の空間システムを対象としたこれまでの研究を、ゴミ処理という具体的テーマに即して一層深め、近世パリの社会的結合の変化と空間区分の再編プロセスを明らかにし、発表することができた。他方で、パリ内部の個別街区、具体的にはサンジェルマンデプレに分析グリッドを絞った研究を論文にまとめ、今後の足がかりをえた。早川は、租税台帳を基にしたアウクスブルクの再洗礼派のトポグラフィックな分析を、研究論文として発表した。2人は、こうした個別の研究成果を国内外の広い分野の研究者との討議にふし、都市史研究の方法の理論化を図ることを当初より目的の一つとしていた。2010年8月に、日本とヨーロッパをフィールドとする日仏の都市史研究者との研究集会を企画・参加することで、初期の目的を達成することができた。この研究集会において問題提起を行った高澤は、日仏の史学史の検討から、異なる地域の都市を比較する有効性と課題を明らかにした。国際的に研究を発信していくためには、史料論、分析視角、研究史などを多角的に提示して議論を行うことが重要であり、とりわけ歴史学の場合、方法論の検討に際して史学史的検討が有益であることが明確になった。この研究集会の記録は、すでに一冊にまとめ、ここに問題提起ならびに個別研究のレジュメのフランス語版(一部英語)を収録した。日本の歴史学研究の蓄積の厚みと水準の高さを国際的に発信することで、今後の研究交流の基盤を作ることができたと考える。
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Research Products
(6 results)