2008 Fiscal Year Annual Research Report
統治空間としての城の生成と機能をめぐる歴史考古学的研究
Project/Area Number |
20520652
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀越 宏一 Toyo University, 文学部, 教授 (20255194)
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Keywords | 中世フランス / 城 / 広間 / 礼拝堂 / 住空間 / ロッシュ城 |
Research Abstract |
3年間に及ぶ研究期間の初年度にあたる2008年度には、フランスで最も早く、10世紀末から11世紀初めに石造の城砦が登場したロワール地方において、アンジュー伯フルク3世ネッラによって建てられた最初期の石造城砦であるロッシュ城の方形天守塔を主たる研究対象とした。文献による調査の後、2008年8月に現地調査を実施し、現地の管理担当者とのインタビュー調査によって、11世紀前半という建設年代確定の決め手となった足場の木材なども実物を見ることができた。 このロッシュ城は、ローマ時代のバシリカ様式公共建築の伝統を受け継いだフランク期の方形の館が城に発展してゆく歴史的経過の、その最初の段階に位置する建物である点でまさに画期的な歴史的意義をもつ城であるが、それと同時に、その天守塔donjonの内部を観察すると、公的統治のための空間としての広間aula(1階)、城主一家の住まいとしての居間=寝室camera(2階)、祈りのための礼拝堂capellaをその内部に含む空間構造を読み取ることが出来る。さらにそこに軍事的機能が加わって、中世フランスの城砦を構成する多様な要素が天守塔donlonの内に総合的に現れるわけで、その意味で、このロッシュ城は、11世紀前半という例外的に早い時期に建設された城でありながら、中世の城の機能をよく示している事例である。 そのような城の多様な機能が、実際にどのように運用されていたのかについては、中世後期(13世紀末〜15世紀)にフランス各地で制作された写本の挿絵において描かれているので、それらを参照することで、広間における宴会の形、寝室の備品(物入れ、櫃、寝台など)、城主階層の衣装を知ることが出来る。この分野では、パリ高等学術研究院のPerrine Mane女史の研究が大いに参考になった。
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Research Products
(1 results)