2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期フランスにおけるイタリア人政治亡命者のネットワーク形成に関する研究
Project/Area Number |
20520653
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 Japan Women's University, 文学部, 教授 (00186264)
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Keywords | 移民 / 亡命者 / イタリア現代史 / 反ファシズム運動 / ネットワーク / 人権同盟 / フリーメイソン |
Research Abstract |
本年度は、フランスにおけるイタリア人権同盟の組織概要と活動の実態を把握するために、人権同盟の活動の中核を担ったルイージ・カンポロンギの人的ネットワークを明らかにし、そのネットワーク上に現れた人々の政治的・社会的特徴を分析することに主眼を置いた。なお、その際の基本的な史料として、2009年3月パリの現代史国際史料図書館と同年9月ミラノの解放(レジスタンス)運動史研究所での史料調査によって得られたものを利用した。 カンポロンギの遺族が保管していた彼宛ての書簡類(解放運動研究所所蔵)を分析すると、イタリア人によるものとフランス人によるものの二つのカテゴリーに大別される。イタリア人は戦間期に限定すると約30名を数え、いずれも反ファシストだが党派的には共和党、統一社会党(改良派)、最大綱領派、独立左派、アナーキストなど多岐にわたり、書簡が送られてきた地域もフランス各地に及んでいることが明らかになった。他方、フランス人も約30名を数え、メナール=ドリアンやバッシュなどフランスの人権同盟幹部のほかに、エリオ、パンルヴェ、ダラディエといった社会党や急進社会党を中心とした有力政治家の名前を数多く確認することができる。こうした政治家たちがカンポロンギと接触した時期は、彼らが閣僚としてフランス在住の外国人(とくに政治亡命者)の処遇を左右できる地位に就いていた頃にあたり、カンポロンギは自らを含めてイタリア人亡命者の地位保全のために尽力していたことが窺える。このように、人権同盟を通じたカンポロンギの人的ネットワークは、きわめて広範なものであったことが確認されたが、イタリア人に関していえば、これまで確認されたネットワークは指導者レベルのものにとどまっている。そこで、人権同盟の地方組織を支えた人々のネットワークについては、別個の方法論と史料に基づく研究のあり方が必要であることが確認された。
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