2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期フランスにおけるイタリア人政治亡命者のネットワーク形成に関する研究
Project/Area Number |
20520653
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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Keywords | 移民 / 亡命者 / イタリア現代史 / 反ファシズム運動 / ネットワーク / 人権同盟 / フリーメイソン / イタリア共産党 |
Research Abstract |
これまでの二年間で、イタリア人権同盟で中核的な役割を果たしたルイージ・カンポロンギを中心に、亡命地であるフランスで彼の周囲に形成された人的ネットワークを考察し、またフランスの人権同盟の活動とフランス以外の反ファシズム運動の活動拠点(とくにアメリカ合衆国)での活動がいかなるネットワークで結ばれてきたかを考察してきた。それを踏まえ、最終年度である本年度は、イタリア人権同盟には参画することのなかった(むしろ1920年代には敵対していた)イタリア共産党員に関して、その政治的・社会的特徴を明らかにしたうえで、イタリア人権同盟会員との間で形成された人的ネットワークについて分析することを目指した。 1926年に反ファシズム諸党派が非合法化されてから、共産党は他の反ファシズム諸党派と同様にフランスを拠点に移して運動を継続した。フランスに在住するイタリア移民に対して積極的に働きかけたことによって、他の反ファシズム諸党派を上回る形で支持者を増やしていった。他の反ファシズム諸党派との連携を拒んでいた彼らが方針を大きく変えたのは、コミンテルンが人民戦線戦術を打ち出した1935年以降のことである。とくに1937年には反ファシズム諸党派を結集する場としてイタリア人民連合を結成し、機関紙『イタリア人の声』を発刊した。この機関紙の初代編集長を務めたのがカンポロンギであり、彼が共産党との連携においても中心的な人物であったことを確認した。また、人民連合は共産党がイニシアティヴを持つ組織であったものの、共和党や「正義と自由」のメンバーの一部も参加しており、反ファシズムの統一組織としての体裁を持っていたことがわかった。さらに、この組織の活動が主にプロヴァンスなどフランス南東部で行われており、この地域に共産党にリクルートされた反ファシズムが多数居住していることが明らかになった。
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