2009 Fiscal Year Annual Research Report
青銅製祭器の生産と流通からみた弥生時代の社会変化の研究
Project/Area Number |
20520671
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
難波 洋三 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 考古第1研究室長 (70189223)
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Keywords | 銅鐸 / 銅戈 / 弥生時代 / 柳沢遺跡 / 青銅器流通 / 鋳型 |
Research Abstract |
今年度は長野県中野市柳沢遺跡出土の銅鐸・銅戈を中心に調査と検討を進め、以下の成果を得た。(1)銅鐸は破損が著しく、また、破片が不足している個体が多いが、出土銅鐸の総数は5個で、いずれも全高20cm余りの小型品であること、1・2号鐸が外縁付鈕1式、3・4号鐸が外縁付鈕2式、5号鐸が外縁付鈕2式か扁平鈕式古段階であり、3・4号鐸は摂津系銅鐸の可能性が高いことが判明した。(2)柳沢遺跡出土銅鐸・銅戈の成分分析を順次実施し、他遺跡出土の青銅器の測定結果を併せて検討した結果、従来指摘されていた鉛同位体比だけでなく、青銅の組成も、外縁付鈕1式までと外縁付鈕2式以降で大きく変化することがわかった。具体的には、外縁付鈕1式から2式になると、錫の濃度が一気に低くなり、微量成分のうちアンチモン・ヒ素の濃度が著しく高くなり両者の比率も大きく変化する。このアンチモンとヒ素の濃度や両者の比率の著しい変化は、鉛だけでなく銅の入手先もこの段階で変わったことを示している。これは、弥生時代の青銅器の原料の流通や製作時期を考える上で、重要な成果である。(3)X線透過写真を撮影した結果、柳沢遺跡出土の大阪湾型銅戈a類は、小気泡を多数含んでいることが判明した。この小気泡は、土製鋳型で製作したことが確実な大阪湾型銅戈b類には、ほぼない。さらに検討した結果、この小気泡は、石製鋳型で鋳造した、扁平鈕式古段階以前の銅鐸や北部九州製の銅戈・銅矛に顕著であることが判明した。よって、大阪湾型銅戈a類は、石製鋳型で鋳造したと推定できる。また、平形銅剣も小気泡を多数含んでいることから、少数の例外を除いて平形銅剣の鋳型の素材は石と推定できた。気泡の多寡は、X線透過写真が撮影されていない場合でも、鋳造後の研磨部の観察によって確認できることが多い。この気泡の多寡は、今後、鋳型の材質や構造を検討する上で、極めて有効な情報となると考える。
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