2010 Fiscal Year Annual Research Report
ローカルネットワークによる牛肉の品質および安全性の構築に関する研究
Project/Area Number |
20520678
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
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Keywords | フードネットワーク / 銘柄牛肉 / 品質 / 栃木県 / 十勝地方 / 乳用種 |
Research Abstract |
平成22年度は、牛肉生産における部門間の品質に関する捉え方の相違に注目しながら、1.「とちぎ和牛」の肥育素牛生産における品質構築、2.乳用種牛肉「十勝若牛」の産地サイドの品質向上および流通業者による品質評価、の2点について実地調査を進め、以下のような成果を得るとともに、3カ年の研究成果について取りまとめを行った。 1.「とちぎ和牛」の肥育素牛生産においては、子牛の品質を左右する交配や繁殖素牛の導入に際し、農協指導員、部会員、関係事業者からの情報を参考にしながらも、実際の精液選択では九州の民間種畜場の種雄牛や他県の県有牛が志向され、子牛の品質に地域固有性は認められなかった。また、子牛の出生地や血統に関する情報は、肥育段階で消費され、最終製品の牛肉の品質には盛り込まれていない。出荷した素牛が同一地域で肥育された場合においても、期待された産肉性を実現し得たかについて情報交換を可能にするようなローカルネットワークは構築されていない。 2.北海道清水町産の「十勝若牛」は、良質な乳用種牛肉に対する需要の高まりを受け、2008年から新たな生産者の参加や増頭によって出荷頭数を伸ばしている。2011年には統一的な飼養基準の作成と、肉色による独自のプレミアム設定を目指し、生産農家間の飼料や肥育方法の差異を調整中である。一方、小売段階においては、競合店との差別化の点から、「十勝若牛」の肉色の淡さ、肉の柔らかさ、臭みのなさというセールスポイントが高く評価される反面、部位別での重量感の乏しさが改善点と認識されている。 以上、牛肉の品質構築に向けたローカルな実践は、和牛肥育地域で先行し、乳用種牛肉の産地でも銘柄ごとに品質向上と商品価値の創出がなされるようになってきているが、変動が大きい近年の牛肉市場の動向が、良質牛肉の市場性を維持させることを困難にしている。
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Research Products
(1 results)