2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520679
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中西 僚太郎 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (70202215)
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Keywords | 鳥瞰図 / 景勝地 / 和歌浦 / 天橋立 / 富士山 / 吉野山 / 高野山 |
Research Abstract |
本研究は、近代における厳島、和歌浦、天橋立、富士山、耶馬溪などの景勝地の鳥瞰図を悉皆調査し、その資料的検討を行うとともに、同時期に作成された「案内記」や「写真帳」を参考資料として、鳥瞰図に表現された景観の特質を明らかにすることを目的としている。本年度はこれらの地域に加えて、高野山と吉野山の鳥瞰図や「案内記」「写真帳」について、図書館や博物館、古書店等にて資料調査を行い、内容の確認と現物やデジタル画像・コピーの収集を行った。その結果、それらの現存状況を把握することができ、主要なものについては現物や画像を入手することができた。そして以上の各地域の鳥瞰図について、データベースを作成するとともに、作成主体などの資料的検討を引き続き行った。これらの資料調査や資料的検討をふまえ、各地域の鳥瞰図の表現内容の分析を行った。その結果、富士山の鳥瞰図は山の景観そのものを主眼として描いたものはほとんどなく、大部分が「登山案内図」として、麓の登山集落や神社、登山経路を主眼として描いたものであること、高野山の図は単色刷りのものがみられるのに対して、吉野山の図はほとんどが多色刷りであり、それは厳島の場合と同様に桜を強調して表現するためであったと考えられること、ともに砂嘴の景観に特徴がある和歌浦と天橋立に関して、和歌浦の鳥瞰図は陸地から海の方を眺める構図が多いのに対して、天橋立は海から陸地の方を眺める構図が多く、これは前近代の絵画や絵図の表現が影響したと考えられること、などが明らかとなった。なお、研究期間の最後である本年度は、最終的な資料調査とデータベースの作成に重点を置いたため、論文の公表には至らなかったが、和歌浦と天橋立に関する鳥瞰図の資料的検討と表現された景観の特質に関しては、今後論文にまとめて公表する予定である。
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