2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本統治期の朝鮮半島における史蹟景観の歴史地理学的研究
Project/Area Number |
20520682
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米家 泰作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10315864)
|
Keywords | 植民地 / 朝鮮 / 史蹟 / 扶余 / コロニアル・ツーリズム / 扶余神宮 / 百済 / 扶蘇山 |
Research Abstract |
研究計画の最終年度にあたる本年度は,研究成果の取りまとめを進めた。 予定していた2つの取りまとめの方向のうち,「史蹟景観の地域的な整備と旅行者の史蹟体験」に関しては,朝鮮半島の扶余(忠清南道)を事例とした検討を取りまとめた(後掲「研究発表」のうち雑誌論文)。ただしここでは,本年度新しく検討した扶余神宮に関する未検討資料(国立公文書館所蔵の神宮計画図など)の紹介・分析を兼ねて,扶余神宮と史蹟との関係性を議論することに重点を置いた。そのなかで,植民地神社としての扶余神宮が,百済の古都・扶余の史蹟の「転用」を明確に意図していたこと,そして古代の日本人駐留地としての扶余像が史蹟保存運動のなかで形成され,かつ体験されたことを示すことができた。ここからは,植民地朝鮮に他者性と同質性という矛盾したものを求めるコロニアル・ツーリズムの特徴が浮かび上がってくる。 一方,扶余における史蹟保存運動の前史,ならびにもう1つの取りまとめの方向として想定していた「植民地時代の朝鮮における史蹟景観の空間的分布の特徴」については,別途原稿を用意している所である。登録された古蹟が,朝鮮王朝の史蹟に富むソウル(京城)を除けば,平壌・慶州・扶余という古代の三国時代の都城とその周辺に,そして文禄・慶長の役(壬辰倭乱・丁酉倭乱)に関わる釜山に特に集中しており,日本側の関心が特定の時代に集中するなかで,史蹟が偏った形で「発見」されたことが確認された。これらの場所は,史蹟ツーリズムの勃興とも有機的に連動していたと考えられる。
|