2008 Fiscal Year Annual Research Report
新自由主義政策環境下の過疎地域の日韓比較研究-政策スタイルと住民組織に注目して
Project/Area Number |
20520686
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (10281974)
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Keywords | 過疎地域 / 新自由主義 / 新活力事業 / 住民組織 / 日韓比較 |
Research Abstract |
本研究の目的は、韓国の「新活力事業」の展開と実態を全国レベルで明らかにするとともに、日韓の過疎地域で起こっている住民組織の再編を政策スタイルの変化と関連づけながら解明し、日韓の過疎政策と住民組織が近年の新自由主義という新たな政策環境の下で、どのように変容し顕在化しているかを究明することである。 本年度の研究調査では、日韓両国の過疎地域における新自由主義政策環境下の住民組織の再編を明らかにするため、次のような研究調査を行った。まず韓国に関しては、(1)「新活力事業」を韓国の過疎地域における新たな外的政策要因として捉え、新活力地域として指定されている70の過疎自治体を対象に、新活力事業計画の目標と主な手段、取り組み体制と策定プロセスについて現地で収集した1次資料をもとに整理し、全国レベルで「新活力事業」の実態を把握した。(2)新活力地域の一つである全羅北道鎮安郡を対象に、「新活力事業」の導入による住民組織の再編についてフィールドワークを行い、従来「マウル(集落)=基礎組織」単位で完結していた住民組織の議論構造や意志決定プロセスが複数のマウル(集落)の連合体へ移行しつつあることを明らかにした。 このような住民組織とその空間単位の再編は、「新活力事業」が提案型の事業を誘導しているが、従来のマウル(集落)は過疎化の進展により政策の受け皿として機能するには人口が少なすぎることが要因と考えられる。その結果、全羅北道鎮安郡では、積極的に事業を受入ながら小学校区単位に再編した住民組織と、従来のマウル(集落)単位住民組織が混在する結果となった。 次いで日本に関しては、合併に伴い地域自治組織の再編を行った広島県安芸高田市を対象に、韓国での調査と同様の方法で、自治組織の再編に関するフィールドワークを行い、新市として統一したガイドラインのもとに自治組織の再編を行ったにもかかわらず、合併前の住民組織の在り方により、合併後の住民組織の再編の方向性とその後の運営に相違が見られることを確認した。また、合併後に新市議員の支持基盤と従来の自治組織との間にズレが生じ、自治組織の利益代弁者としての地元議員の役割が弱まっていることなども確認された。
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Research Products
(5 results)