2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の地方都市における支配構造と地域政治に関する社会地理学的研究
Project/Area Number |
20520689
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠城 明雄 Kyushu University, 人文科学研究院, 教授 (00243866)
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Keywords | 地域政治 / 空間の生産 / 建造環境 / 場所 |
Research Abstract |
1.主に以下の三ヶ所で資料の調査と収集を行った。 (1)宮城県立図書館、仙台市図書館、宮城県公文書館において、1900年代の仙台市の地域政治構造を明らかにするため、市会議員選挙の動向に関して新聞資料(河北新報と東北新聞)の調査とコピーを行った。その結果、選挙前に市の有力者たちによって議員候補者の予選が行われ、会派間の競争が回避されていたことと、そうした既存の都市社会の支配構造に対して、次第に市民から反発の声が上がってきたことなどが明らかとなった。これにより旧城下町であり、官吏の割合が高い都市における地域政治の特徴について新たな知見を得ることができた。 (2)山口県立図書館において、1910年代の下関市を中心とした各種選挙と都市開発をめぐる市有力者、町、地域団体、民衆の動向を明らかにするために、新聞資料(馬関毎日新聞と関門日日新聞)の調査とコピーを行った。その結果、港湾修築問題を契機として大規模な民衆運動が発生し、地域の政治構造に影響を与えたことと、町総代を中心とした都市社会の支配構造に対する批判が次第に高まってきたことが明らかとなった。 (3)国立国会図書館において、大正中期に下関市で発行されていた雑誌(日本之関門)の調査とコピーを行った。その結果、都市発展の方向性、地域政治状況、都市社会問題などに関する有力者たちの言説から、当時の下関市における都市の語りの構造が明らかとなった。 2.近年の社会地理学の研究動向について、特にフランス語圏社会地理学の認識論と方法論の整理と検討を行った。領域性の社会的生産と諸主体の形成との関係、都市支配と政治権力、物質的・言説的なレベルでの領域の利用・領有をめぐる諸問題などが重要な論点となっていることが明らかとなった。 3.以上の研究成果について、門司市と下関市の明治後期の地域政治と支配構造に関する論文(本の1章)を発表し、その他、1920年代〜1930年代前半にかけての地域住民組織の運営とその実態を主なテーマとして3回の学会発表を行った。
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Research Products
(6 results)