2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の地方都市における支配構造と地域政治に関する社会地理学的研究
Project/Area Number |
20520689
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠城 明雄 Kyushu University, 人文科学研究院, 教授 (00243866)
|
Keywords | 地域政治 / 空間の生産 / 建造環境 / 場所 |
Research Abstract |
1. 主に以下の四ヶ所で資料の調査と収集を行った。 (1) 宮城県立図書館と仙台市図書館において、明治後期の仙台市における水道布設問題と地域政治の動向について、新聞資料(河北新報)の調査と複写を行った。その結果、これまで対立を回避してきた市会の政治集団が水道布設をめぐって対立したことや、地域住民を巻き込んだ運動が展開されたことなどが明らかとなった。これにより、この問題がそれ以後の仙台市の地域政治構造に一定の影響を及ぼしたことが確認できた。 (2) 山口県立図書館と文書館において、大正初期の下関市の都市開発をめぐる政治動向を明らかにするために、新聞資料(馬関毎日新聞、関門日日新聞)の調査と複写を行った。その結果、昨年度明らかにした「港湾修築問題」が、その後の市政運営に影響を及ぼし、町総代を中心とした地域支配構造への批判が展開されていったことなどが確認できた。 (3) 長崎県立図書館において、明治後期の長崎市における築港問題をめぐる政治集団などの対立について調査を行った。これまでの政治会派や商工団体、地域団体の対立がこの問題を通じて増幅されると同時に、この問題が諸団体を再編成する契機となり、その後の市政の構造に一定の影響を及ぼしたことが確認できた。 (4) 国立国会図書館において、『鎮西日報』の調査を行い、佐世保市における伝染病流行時の対策と都市構造に関する情報を収集した。また下関市で発行されていた雑誌『日本之関門』の調査を継続して行い、政治状況や都市発展の方向性に関する地域有力者の言説を検討した。 2. 近年の都市社会地理学の研究動向について、特にフランス語圏社会地理学の認識論と方法論の整理検討を行った。「領有」および「行為体」の概念を中心に、都市空間の支配と意味の生産、建造物の「遺産化」といった諸問題が重要な論点になっていることが明らかとなった。 3. 以上の研究成果について、都市社会地理学と近代都市における伝染病と都市社会に関する論文を発表すると同時に、下関市の都市形成の特質とフランス社会地理学の諸問題について、研究会で発表を行い、有益な指摘を受けることができた。
|
Research Products
(4 results)