2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520690
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 孝史 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10230400)
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Keywords | 沖縄 / 領域 / 政治地理学 / 社会運動 / 戦後 / 米軍 / アイデンティティ / 地政学 |
Research Abstract |
本年度は沖縄の領域性をめぐる研究代表者のこれまでの研究、ならびに本助成研究の成果を踏まえた『政治・空間・場所-「政治の地理学」にむけて』をナカニシヤ出版から刊行した。本書の9章では地理学におけるスケール概念とともに「スケールの政治」について、12章では沖縄県が日本の領域に包摂される過程での政党の編成と対立について、そして第13章では同じく沖縄県の日本復帰をめぐって繰り広げられた社会運度に「領域」がいかにして物質的・言説的に関与したかについて説明している。 沖縄県の日本復帰にまつわる領域性の作用は、社会運動の方向性を左右し、米軍基地の撤去・削減を熱望した革新陣営は米軍の駐留継続という復帰の結末に大きく失望する。これは日米安保体制という国際関係が、沖縄県という領土(復帰)の問題と同一視された「あいまい化」の作用の一例である。この過程について、2010年4月にワシントンDCで開催された全米地理学者会議において発表し、復帰運動におけるナショナリズムと領土の接合が米軍駐留を継続させようという日米両国の意図を「あいまい化」したことを明らかにした。 また本年度は、昨年度にアメリカ国立公文書館II(メリーランド州カレッジパーク)での収集したUSCAR(琉球列島米国民政府)文書のうち、沖縄復帰前後の尖閣列島に関する文書を集中的に検討した。これらの文書は、大陸棚上にあると想定される海底油田鉱床の調査権と採掘権をめぐって、米国施政権下にあった沖縄と中国共産党政府との緊張を抱えた台湾との間に擬似的領土問題が発生したことを記し、日本、米国、および台湾政府間での折衝のプロセスを生々しく伝えている。その分析結果は、本年度7月にイスラエル国テルアビブで開催された国際地理学連合地域会議において発表し、領土問題がそもそも「固有の」領域が画定されないところから発生するプロセスを明らかにした。
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