2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520700
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬川 昌久 Tohoku University, 東北アジア研究センター, 教授 (00187832)
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Keywords | 中国 / 少数民族 / 族譜 / ショオ族 / 回族 / チワン族 / 漢族 / 父系出自 |
Research Abstract |
初年度である平成20年度は、広東省民族研究所との間で、必要な少数民族の族譜資料の入手について交渉を行い、ショオ族、回族、チワン族等の貴重な族譜資料のコピーならびに写真画像の入手を実現した。そして、それらについての初期的なリストづくりならびに内容分析に着手した。 このうち、広東省北部南雄市地域のショオ族に関しては、1980年代の民族籍追加認定に際して、それらの族譜資料が「少数民族」としての認定に重要な根拠としての役割を果たしたことが明らかとなった。これらの族譜(雷姓、藍姓)は、形式の上では周囲の漢族、特に客家系漢族のそれと同様のものであり、また内容的にも、祖先が黄河中流域の高貴な一族の末流であるとしているなどの点において、漢族のそれと異なるところがない。特に、福建省寧化県石壁を故地とする記述のあるものもあり、それらは客家漢族の典型的な祖先移住伝承と完全に重なる内容をもっている。このように、形式、内容ともに漢族のそれと全く変わりがなく、祖先は漢族であるということを証明するための文書としての性格を強く有するショオ族の族譜が、1980年代に行われた少数民族「ショオ族」としての追加認定要求の際には、現地住民自身ならびに地元の民族行政当局双方によって、彼らが漢族ではない「ショオ族」であることの証拠として採用されたことは、極めて注目に値する事実である。清代以前の文脈において、祖先が由緒ある漢族の名門であることを証明する文書であったはずの族譜が、現在の民族認定作業の中で少数民族(非漢族)であることの証明に用いられているというこの種のパラドクスは、族譜という文化装置の時代を超え社会状況を超えた再利用の事例として解釈できる。本年度の研究における事例分析ならびに考察からは、以上の点を明らかにした。
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Research Products
(1 results)