2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520700
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬川 昌久 Tohoku University, 東北アジア研究センター, 教授 (00187832)
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Keywords | 中国 / 少数民族 / 族譜 / ショオ族 / 回族 / チワン族 / 漢族 / 父系出自 |
Research Abstract |
2年度目である平成21年度は、前年度に広東省民族研究所と交渉を行い入手したショオ族、回族、チワン族等の貴重な族譜資料のコピーならびにデジタル写真画像について、初期的なリストづくりを継続して行うとともに、本格的な内容分析に着手した。 まず、広東省民族研究所においてデジタルカメラで撮影した資料については、形のゆがみなどをPC上でレタッチソフトなどを用いて修正する作業を行い、一部の族譜についてこれを完成させた。同時に、明度やコントラストについても調整を施して、簡易的な印刷に耐えるレベルにまで加工した。 次に内容分析に関しては、主に分析の対象とした広東省北部南雄市地域のショオ族(雷姓、藍姓)の族譜に関して、以下の点が明らかとなった。清代から民国期にかけて数次の編纂が行われており、いずれも黄河中流域の高貴な一族の末流であることを系譜的に主張するとともに、科挙及第者や生員など一族出身の功名者を誇示する内容となっている。他方、1990年代に編纂された最新バージョンのそれは、1980年代の民族籍追加認定運動に主要な編纂動機を有し、自分たちの一族と、ショオ族として既認定の江西省などに在住する一族との系譜的連続性の立証に強調点をおいている。また、こうした最新版の族譜は、単なる系譜情報や祖先の偉業に関する情報ばかりではなく、ショオ族の民族文化や歴史に関する学術論文の一節、あるいは民族認定に関する行政文書の一部が引用されるなど、旧来の族譜とは明らかに異質な要素が含有されている。このように、同じく族譜という形式を引き継ぎながらも、現代的社会文脈の中で新たに編纂された族譜は、それが主張する社会的正統性の内容について、旧来の族譜とは非常に異なった性格を有していることが解明された。
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Research Products
(1 results)