2010 Fiscal Year Annual Research Report
西チベット、ラダックにおける現代化とシャマニズムの動態に関する研究
Project/Area Number |
20520705
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 孝子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20293839)
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Keywords | ラダック / シャマニズム / 現代化 / 文化人類学 / 西チベット / 伝統の連続性 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、インド国北西部ラダック地方における実地調査をもとに、現代化のなかでのシャマニズムの動態のメカニズムを解明することにある。本年度は、本研究計画の最終年度にあたり、研究代表者はこれまでの調査資料の整理、分析の継続とラダック地方における短期間の補足的フィールド調査の実施による情報資料の収集を行った。当初、平成22年9月に補足調査を実施する計画であったが、平成22年8月にラダック地方は、未曾有の集中豪雨による大災害を受けたため、調査時期を延期し、補足調査を平成22年12月の「正月」行事の時期に合わせて実施した。今回の補足調査により、ラダックにおいてチベット仏教への信仰が厚い中で、人々の間には伝統的な土地神に対するアニミズム的信仰も深く根付き、そのことが現代化の中でのシャマニズムの連続性の背景となっていることなどを、改めて確認することができた。また、平成22年8月15-21日には、カナダ、トロントで開催された国際宗教学・宗教史会議第20回世界大会において、本研究成果の一部を、「ラダックにおけるシャマンの力と仏教伝統の連続性」という題目で口頭発表した。 これまでのフィールド調査で収集した参与観察と聞き取りのデータ、および文献情報資料等の整理・分析により、(1)ラダックにおいてチベット仏教とシャマニズムの伝統が密接に連繋する形で共存すること、(2)憑依による神々の力の誇示がシャマニズムの伝統の連続性を支えるだけではなく、(3)チベット仏教への帰依の継続をも支える原動力となっていること、一方で、(4)現代化の中で村落における伝統的な社会関係の維持も難しくなっていること、(5)その結果、伝統的祭礼の維持をめぐり村落内のコンフリクトが引き起こされている、という現代化とシャマニズムの動態を明らかにすることができた。
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Research Products
(5 results)