2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代山村開発史の民俗学的研究―熊本県五木村を事例にして―
Project/Area Number |
20520710
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
湯川 洋司 Yamaguchi University, 人文学部, 教授 (10166853)
|
Keywords | 山村 / 開発史 / 民俗学 / 五木村 |
Research Abstract |
1. 五木村実地調査の実施 五木村において、(1)河川開発と河川利用の事例、(2)五木村各地に所在する商店の成立事情・営業内容と地域における役割、(3)山林利用の変遷について、関係者・体験者等から聞き書きを中心にした調査を行い、資料を得た。 2. 関係資史料調査 熊本県立図書館、人吉市立図書館、成城大学柳田文庫等において、木炭生産に関する文献・統計資料、人吉・球磨地方・五木村の山村開発史関係資料等の調査・収集を行った。 3. 関連地域・資料調査 (1) 五木村内に発電所を持つ(株)チッソの動力部(水俣市)を訪れ、関係資料(全30点)の貸与を受けた(解読・分析作業は来年度に継続・本格化)。(2)水俣市立図書館において、(株)チッソの社内報等を閲覧し、五木村内発電所に関する資料を収集した。 4. 収集データの整理・入力、年表・文献目録作成 (1) 五木村の農林業センサス農業集落カードにより、五木村の基礎的データの整理を行った。(2)新たに収集した資料に基づき、昨年度作成に着手した年表の内容を更新・増補するとともに、関係文献目録作成作業を継続して行った。 5. 総括 上記の調査等から、(1)村内各所に所在する商店が村外からの物品移入の役割を果たすだけではなく、五木産の木炭、茶などの山産物の販売・移出にも大きな役割を果たしてきたことが判明し、山の開発史をめぐる細やかな調査がさらに必要であることを確認した。(2)昭和初期に竣工した(株)チッソの水力発電所建設に伴い、道路・橋の整備も進み、建設工事関連の雇用が創出され生業構造に変化が生じるなど、企業活動が与えた影響の大きさを確認し、五木村内に進出した企業の動きと変遷を資史料と聞き書きにより復元するという作業の課題と重要性を明確にすることができた。
|