2010 Fiscal Year Annual Research Report
南西日本の過疎高齢海村における地域おこしと観光資源の開発に関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
20520712
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高桑 史子 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90289984)
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Keywords | 過疎高齢社会 / 地域おこし / 地域社会の崩壊 / 観光開発 / 郷友会 / 甑島 / 鳩間島 / 学校存続 |
Research Abstract |
本年は研究期間の最終年度であるため、過去2年にわたって収集した資料の分析に加えて、補充調査を実施したが、その際には研究対象社会の内部からと外部からのまなざしの相互関係に着目することを目的とした。そのため、現地での調査に加え、彼/彼女たちが移住した先での聞き取りを集中して行うとともに、役場等公的機関の関係者、当該社会に隣接した地区の居住者からの聞き取り調査を行った。当該社会については超過疎高齢村落である下甑島内川内にて祭礼調査を行い、村落成員と祭礼に参加する外部者による地域存続のための戦略を考察した。また公的機関の関係者(薩摩川内市)と隣接地区の住民(薩摩川内市、柳井市)からの聞き取りにより、当該地区住民と「外部者」との意識の非連続生を確認した。さらに阪神間に居住する甑島出身者、那覇市に居住する鳩間島出身者からは、移住先で生活を軌道に乗せた世代と子世代との間の故郷への思いの断絶を確認したが、同時に移住者自身も故郷の島へのアイデンティティが希薄化していることが判明した。とりわけ顕著なのは那覇在住の鳩間島出身者である。絶えず鳩間島と関係を維持することが可能な在石垣島郷友会成員と異なり、在那覇鳩間出身者は墓を島から移すなど、故郷とのつながりを示す行為は薄まっている。定期的に集まり、カラオケ、モヤイなどを通じて絶えず連絡をとりあい、その中心には「鳩間」が存在しているものの、むしろ、それは故郷とのつながりを示す記号ではなく、移住地で共有するキーワードのようなものと化している。出身地である村落の衰退を阻止しようという観念は抽象化された心象にとどまり、実際に地域おこしへと発展させるための戦略が今後の課題である。
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