2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代化以前の鋳物業の民俗技術と営業形態に関する研究
Project/Area Number |
20520717
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉田 晶子 国立民族学博物館, 外来研究員 (00449828)
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Keywords | 民俗学 / 文化史 / 物質文化 / 鋳造技術 / 民俗技術 |
Research Abstract |
本研究では、近代化以前の多様な鋳造業の形態や職分の相違を明らかにすることを目的に、(1)青銅製の仏具類を専門に鋳造する仏具師、(2)鉄製の茶湯釜や鉄瓶を専門に鋳造する釜師、(3)青銅製仏具、鉄製農具、鉄製日常品など多様な製品を鋳造する鋳物師、(4)鋳造のほかに挽きもの技術を併用して錫製の容器を製造する錫師、という4つの様相の異なる事例を主な対象として、平成20年度と21年度の2年間で、それぞれの用具・製品の実測調査と写真撮影、鋳造技術や営業形態に関する聞取り調査などを行ってきた。本年度は、平成23年度に刊行を予定している報告書の作成を念頭におき、これまでの調査で、得た成果を整理するとともに、文献史料から得た情報などを合わせて、民俗技術、営業形態、製造用具・製品などについて比較検討を行った。 その結果、仏具屋、釜師、鋳物師、錫師などの多様な職種に分かれて存在した鋳造関係業者には、原料金属、鋳造技術(惣型法・蝋型法)、溶解用具(甑炉・坩堝)において相違点があったことが解明でき、近代化以前の鋳物業の全体像を具体的に復元することが可能となった。この成果のうち、蝋型法・坩堝に象徴される技術を持つ仏具師については、惣型法・甑炉を特色とする在郷の鋳物師との比較に焦点をあて、口頭及び紙面(「京都長谷川亀右衛門家の蝋型法における鋳型造型」『アジア鋳造史学会研究発表概要集』4号,2010年8月)で発表した。 また、錫師については、他の鋳造関係業者と異なる独自の技術を有していることだけでなく、その国内生産が16世紀の堺で行われていたことを明らかにするとともに、錫器が神酒用徳利として位置づけられていたことを示す民俗事例を確認し、それぞれの成果を紙面(「錫器製造技術の地域差」(『鋳造遺跡研究会2010』,2010年9月、「オミキスズ・オミキノスズ」(『民具マンスリー』43巻11号、2011年2月)で発表した。
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Research Products
(8 results)