2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化と南インド音楽の変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
20520722
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
寺田 吉孝 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (00290924)
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Keywords | 芸能 / 芸術 |
Research Abstract |
プロジェクト3年目の平成22年度には、アメリカ合衆国、インドにおいて各1回の現地調査を行った。アメリカ合衆国(平成22年8月)では、ワシントン州シアトル市内および周辺地域にある音楽団体とその活動について調査をおこなった。特に、シアトルで最も長い歴史を持ち、他地域の音楽団体とも密接なネットワーク関係をもつインド系音楽団体ラーガマーラへの聞き取り調査を行い、北アメリカにおけるインド音楽・舞踊の上演・教授の実態、南アジア系コミュニティとの関係などについて理解を深めることができた。また、近年のインド系住民の増加に従い、シアトルのインド系コミュニティは出身地域・母語ごとに複数の親睦団体が出現し、音楽活動も個別化する傾向がある点が確認できた。 インド(平成23年2~3月)では、南インド音楽・舞踊の中心地とされるチェンナイにおいて、在外インド人(NRI)演奏家の活動の実態を調査した。特に、アメリカ合衆国クリーヴランド市で行われる音楽祭の主催者らにインタビューを行い、音楽祭の歴史、理念、運営法などに関して情報を収集した。また、インド在住の音楽教師がNRIの子弟にインターネットを用いて音楽を教える様子を映像記録するとともに参加者に聞き取り調査を行った。この結果、当初NRIを対象に始められたインターネット教授法が、インド国内でも広く採用されており、個人の音楽家だけでなく音楽学校などにおいても遠隔地教育に利用されていることが判明した。 以上の調査から、NRIコミュニティが豊かな経済力を背景にして「母国」の音楽文化に大きな影響力を持っていること、南インド音楽がグローバルな人的・経済的ネットワークに不可分に組み込まれていることなどが明らかになった。
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Research Products
(3 results)