2009 Fiscal Year Annual Research Report
イベリア半島におけるブタ飼養と地域ブランドとしての「イベリコ豚」の形成過程
Project/Area Number |
20520723
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
野林 厚志 National Museum of Ethnology, 文化資源研究センター, 准教授 (10290925)
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Keywords | イベリコ豚 / 地域ブランド / スペイン / 畜産業 / 家畜品種 / 地域文化 |
Research Abstract |
本年度は研究計画にしたがい、スペインにおける野外調査を実施した。具体的には、イベリコ豚を用いた代表的な加工食品であるハム製造に関わる、企業、品質管理協会、農家、自家加工を行っている食肉販売店での聞き取り調査ならびに参与観察を行った。企業ならびに品質管理協会については、イベリコ豚生ハムの4大産地の一つであるギフエロ地域において、JM社(仮名)ならびに品質管理協会である、G.O.ギフエロにおいて聞き取り調査を行った。これらの調査から明らかとなったのは、品質管理協会による、地域ブランドの産地証明が、大手の企業と中小規模の畜産農家にとっては異なる位置づけになったということである。すなわち、品質管理や商品化について自社で行うことが可能な企業にとって、公的機関である品質管理協会の手続き等は必ずしも、企業の利益や思惑とは一致せず、これらの管理協会からの認定を受けないで、自社ブランドを自力で流通させる試みが行われていた、一方で、競争力が必ずしもついていない、中小規模の企業や農家は、品質管理協会の認定による、品質の保証とそれにともなう価格の引き上げが産業化に重要な機能を有している様相が具体的に明らかとなった。また、イベリコ豚を飼養していない地域では、品質管理協会は設置されておらず、地元の食肉販売小売店が自家加工、製造の生ハムを自家ブランドとして販売しており、地域ごとに特徴のある商品化が行われていたことが明らかとなった。これらの地域では、イベリコ品種の重要性は必ずしも強調されておらず、地域ブランドとしてのイベリコ豚はスペインの地域的な畜産業の戦略から作られている可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)