2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20529001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木山 克彦 Hokkaido University, スラブ研究センター, 博士研究員 (20507248)
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Keywords | 初期鉄器時代 / 靺鞨 / 渤海 / ポリツェ文化 / パクロフカ文化 |
Research Abstract |
平成21年度は、前年に引き続き研究計画に基づき、関連資料が収蔵されている各機関で資料分析を行った。内、顕著な成果を挙げた調査は、中国吉林省文物考古学研究所、吉林省博物館、ロシアノヴォシビルスク州ロシア科学アカデミーシベリア支部でのものである。前者では、靺鞨成立前の包子沿類型の資料、老河深遺跡、査里巴遺跡、六頂山遺跡等、靺鞨・渤海の資料を実見・観察した。ここで包子沿類型と靺鞨初期の陶質土器間で同地域特有の系統性を確認した。後者では、靺鞨成立前のポリツェ文化の資料、靺鞨期のナイフェリト、トロイツコエ遺跡の資料を実見・分析した。結果、ポリツェ文化前半に属するジョルティ・ヤール期と最終期のクケレヴォ期の内容を詳細に把握することができた。アムール流域における初期鉄器時代~靺鞨への系統と靺鞨罐の成立、他地域への拡大過程を推測できる内容が得られた。これらの成果については、来年度に公表の予定である。 本年中に公表した研究成果は前年までに実施した活動成果であり、サハリン、極東地域の初期鉄器時代から中世を対象としたものである。当該地域の考古学の成果及び日本列島の状況との比較を行う上での基礎資料として重要と考えている。特に、靺鞨系文化のパクロフカ文化土器群の分析は、編年大要と経時変化が靺鞨内の地域差から始まり、渤海、遼、金と周辺国家との関係の中で起こることを指摘した。今後同文化を検討する上での基礎として位置付けられる。また同資料はサハリン、北海道に出土するが、従来、北海道の古代文化との交流という枠組みでしか検討されていない。同文化が長期に及び、大陸側での変化の影響を考慮すれば、従来の交流史復元が不十分であることが明らかであり、今後日本列島と大陸の当該期の「交流」を検討する上での基礎としても重要である。
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