2011 Fiscal Year Annual Research Report
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20529001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木山 克彦 北海道大学, スラブ研究センター, 博士研究員 (20507248)
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Keywords | 北東アジア考古学 / 靺鞨 / 初期鉄器時代 / 地域間交渉 / 土器研究 |
Research Abstract |
平成23年度は研究計画に基づき、ロシア沿海地方での野外調査とロシア科学アカデミー極東支部での資料調査を実施した。野外調査では、靺鞨罐成立以前のポリツェIII期に属するエリザベトフカ1遺跡の発掘調査を行った。ポリツェIII期は、ポリツェ文化が沿海地方に拡大する時期である。この拡大した地域がその後の靺鞨罐の基盤となると申請者は考えている。ロシア沿海地方とアムール流域の中間地点に在する同遺跡の把握は、同文化の拡大過程の詳細を明らかにする上で重要な位置を占めており、本年度の調査で、該当資料を得ることができた。また合わせて、これまで知られていなかった当該地域の青銅器時代併行の資料ができた。極東の青銅器時代を把握する上で重要な成果である。出土資料はロシア科学アカデミー極東支部に保管されており、資料整理・分析も開始している。合わせて比較分析の為、同機関に所蔵されている資料も分析している。これらの成果は、次年度公開予定である。 前年までの研究成果を踏まえ幾つかの論文・発表を行った。まず極東地域における靺鞨罐の成立以前から中世期の集団関係の変遷を概括した総論を公表した。当該地域研究の現状を一般向けに纏めたものとして、一定の意義を持つと考える。また靺鞨罐成立過程に関する見解を国際会議で発表した。ロシア、中国、韓国各国の当該期研究者が集う会議で日本人研究者の見解を提示でき、現時点での当該期研究の各国間の合意点、相違点を明確化でき、非常に意義深いものとなった。また契丹陶質土器の研究報告も国際会議で行った。これまで契丹陶質土器の研究は殆ど無く、本分析の意義は大きい。この報告は本研究と直接の関連はないが、渤海土器との比較分析を行っており、本研究の成果を援用している。またこれまでの研究成果を広く社会に還元することために、地域で行われている公開講座で講演をする活動も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初予定した対象とした資料の分析調査は順調に進捗している。またその成果についても毎年コンスタントに公表できている。一方で、分析資料の蓄積に対し、整理と結果の取り纏め、その後の公開が若干遅れている側面もある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、整理と結果の取り纏めが、終了していない部分がある。 次年度以降も継続的に現地で不足部分を補うための調査を実施する。これまでの調査成果を整理し、考察を行い、個別成果を総合化し、当該期の交渉関係の様相についての考察を進める作業を行う。
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