2009 Fiscal Year Annual Research Report
『瑜伽師地論』とアビダルマ仏教の思想的関連について
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20529002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 晃一 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特任研究員 (70345239)
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Keywords | 仏教 / 瑜伽行派 / ヴァスバンドゥ / アサンガ |
Research Abstract |
本研究は,大乗仏教の一派である瑜伽行派の思想と,伝統的な部派仏教の思想であるアビダルマの関連について考察することを目的としている.すでに指摘されているように,瑜伽行派の思想はアビダルマ仏教の影響を受けていると考えられる.これに加えて,近年の研究では,アビダルマ思想の代表的な論書であり,ヴァスバンドゥの主著の一つである『阿毘達摩倶舎論』(以下『倶舎論』と省略)の中に,瑜伽行派の根本典籍である『瑜伽師地論』(以下『瑜伽論』と省略)に遡及しうる記述が多く見出される点が指摘されている.昨年度はその中でも『縁起経』などに見られる縁起の定型表現に関するヴァスバンドゥの解説について分析を加えた. ヴァスバンドゥが『倶舎論』で紹介する縁起の定型表現は,瑜伽行派の説であることは,彼の他の著作などとの比較から明らかであることが知られている.また,それが具体的には瑜伽行派の思想家アサンガの著作に遡及しうることも指摘されている.しかし,『倶舎論』の記述が簡潔であるため,そのアサンガの見解に対するヴァスバンドゥの態度は不明瞭な点があったが,『倶舎論』の文脈と,アサンガに帰せられる幾つかの著作を分析することを通じて,ヴァスバンドゥがアサンガに対して批判的な見解を持っていた可能性を指摘した.その考察内容は日本印度学仏教学会第六十回学術大会(2009年9月9日、於大谷大学)で,「『倶舎論』におけるVasubandhuの瑜伽行派説に対する批判的見解」と題して発表した.
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Research Products
(1 results)