2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山崎 康仕 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (00200668)
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Keywords | 生命倫理 / 自己決定権 / 権利基底的規範 / 家族基底的規範 |
Research Abstract |
本研究は,生命倫理規範がどのように制度化されるべきかを基本テーマとしているが,そのテーマは以下の側面から研究されてきている。 (1)本研究の理論的・文献的な研究は,「欧米型生命倫理学の特質と限界」と「生命倫理規範におけるGlobalizationとLocalism」をその研究目的としているが,前者については,欧米型の生命倫理学の基本的特徴として,(a)自己決定至上主義の個人主義,(b)権利基底的な立論,(c)他者危害原則,(d)功利主義的視座を確認した。これらの特質の代替または補完的理論として,個人の権利基底的な規範ではなく,家族に基礎を置く「家族基底的な生命倫理規範」の可能性の原理的に探求した。 (2)調査型の実証的研究としては,1937年の憲法の前文に「個人の尊厳(the dignity of the individual)という言葉を欧米で初めて書き込んだアイルランド憲法に,個人主義的な自己決定論の萌芽を確認すべく調査を行った。また,東アジア型の生命倫理規範の特質を探求すべく韓国の研究者にインタビューという形で調査を行った。 (3)我が国の「在るべき」生命倫理規範についての原理的研究は,なお形成過程にあるが,種々の問題を通して,自己決定至上主義に立脚した「個人の権利基底的な規範」よりも「家族基底的な生命倫理規範」が適切であると考えられる場面が見えてきた。 (4)国際学会での研究発表については,第7回東アジア法哲学シンポジウム(中国・長春)に出席し分科会での司会を担当した。当学会では,本研究の発表にはいたならかったが,中国の研究者との間の意見交換で貴重な示唆を受けた。
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Research Products
(1 results)