2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
瀧川 裕英 Osaka City University, 大学院・法学研究科, 准教授 (50251434)
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Keywords | 政治的責務 / 遵法義務 / 国家 / 社会契約 / ルソー / ロック |
Research Abstract |
古典的な国家の正当化論(政治的責務論)を再検討し、そこで得られた知見を元に、新しい世界秩序像である複合国境論を理論仮説として提示し検討することが、本研究の目的である。この目的のために平成20年度に注力したのは、(1)同意論(社会契約論)の再検討、(2)利益論(自然状態論)の検討、(3)関係的責務論の総括、(4)参加による権力統御の限界確定である。 (1)社会契約論の意義を再検討すべく、同意がなぜ拘束するかの哲学的考察を行った。その結果得られた知見は、自然状態では約束を守る義務は存在しないというヒュームに反して黙約がなくても約束を守る義務は存在しうること、強制による契約も有効であるとの社会契約論の主張も十分理由があること、しかし居住や投票を暗黙の同意として捉えるのは困難であること、等である。その一部について研究報告を行った(2008.12東京法哲学研究会於法政大学)。 (2)利益論(自然状態論)を検討すべく、ゲーム理論や古典的議論を精査した。その結果得られた知見は、短期的視点では国家は必要であること、国家の存在意義は利益供給のみならず法的状態の達成に求められること、等である。その一部について、日本法哲学会・学術大会(2008.11於学習院大学)において、「遵法義務の問題地平」と題するワークショップを開催し、他の研究者と共に報告・討論を行った。 (3)関係的責務論を総括し、R・ドゥオーキンは純一性という理念の下で平等な存在として国民を捉えて政治的責務の正当化を試みているが、理論的に失敗しているという結論に至った(ARSP Beiheftに掲載予定)。 (4)国民が政治的責務を負う国家が、健全に作動するための統治機構の条件として、参加に注目し、その限界を確認した。その成果は、C・サンスティーン教授を招いたセミナーに於ける討論(ARSP Beiheftに掲載予定)や被害者参加制度の検討に結実した。
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Research Products
(4 results)