2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
瀧川 裕英 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50251434)
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Keywords | 政治的責務 / 遵法義務 / 国家 / 割当責任 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
古典的な国家の正当化論(政治的責務論)を再検討し、そこで得られた知見を元に、新しい世界秩序像である複合国境論を理論仮説として提示し検討することが、本研究の目的である。この目的のために最終年度である平成22年度に注力したのは、グローバリゼーションが進行する時代における国家の役割の再定位である。特に、(1)新しい世界秩序の根拠、(2)新しい世界秩序において国家がしめるべき位置、について研究を行った。 (1) 人権を保障する責任を負うのは誰かという問題を設定し、人権は第一次的には国家に対する権利ではなく万人に対する権利として理解すべきこと、第二次的にはそれぞれの国家が人権を保障する責任を負っていることを示した。また、正義が妥当するのは国家内部のみであり、グローバルには妥当しないとするドゥオーキンの理論を検討し、その背景にあるのは国家の強制力の正当化という問題設定であること、その問題設定からしてもグローバルな正義を有意味に語りうることを示した。以上により、人権が世界秩序の根拠となりうることを示した。 (2) グローバルな課題に対応して様々な規制を行う主体として、国際組織やNGOなどよりも依然として国家が適切であることを示した。その理由として、国家は他の主体と比べて、説明責任と統治能力の点で優れていることを指摘した。関連して、グローバル・リスクに対処するための世界秩序構想として、スローターの政府ネットワーク論を発展させた多層ネットワーク論を展開した。世界が課題領域に即してネットワークを構築して解決にあたるという構想を示した。
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Research Products
(7 results)