2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530013
|
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
堀井 聡江 桜美林大学, 人文学系, 講師 (20376833)
|
Keywords | 民法 / イスラーム法 / アラブ諸国 / 近代法 / 先買権 / 所有権 / 植民地 / マジャッラ |
Research Abstract |
交付申請書「研究実施計画」に記したように,今年度はこれまでに収集した資料の分析作業を中心としつつ,フランス国立図書館で補足的な資料調査を1回行った。その成果は以下の通りである: 1.エジプトについては,先買権制度に関する投稿中の英語論文が掲載許可を得た。このなかで,アッバースィーのal-Fatawa al-mahdiyya等,本研究で収集した資料の一部を用いた。 2.エジプト以外の対象諸国(シリア,レバノン,イラク,リビア)についても,先買権を含む土地制度を中心にオスマン法の影響を考察してきた。しかし,シリアおよびレバノンのフランス委任統治期の資料の分析から,両国の土地制度はオスマン法の直接的影響ではなく,フランスの他の植民地の法をモデルとしていることが明らかとなった。リビアについてはまだ情報が不足しているが,少なくとも,一見オスマン法の影響に見える土地所有権の構造については,やはりイタリアの植民地政策の影響が明らかとなった。ただし以上の点については,成果発表には至らなかった。 3.他方で,オスマン法の影響という意味では,むしろオスマン朝の債権契約法典「マジャッラ」を考察の対象に加えるべきであることがわかった。イスラーム法に基づく「マジャッラ」は,その個々の規定についてはオスマン朝後継諸国の法に殆ど影響を与えていないため,これまで着目してこなかったが,同法典がこれら諸国の独立まで「民法典」と認識されていたことからも,民法秩序ないし民法観という点で法の近代化とあわせてその影響を分析する意義があろう。これについては,同法典の翻訳プロジェクトの成果発表の中で,本研究との関連性をふまえつつ,若干の考察と展望を述べた。
|
Research Products
(3 results)